原因不明の胃痛に襲われた
単身赴任中の金融機関管理職Sさん(52歳)

単身赴任で居酒屋通い
つまみを毎日食べる日々

 大手信用金庫に勤めるSさんは、入行以来30年以上、6時に起きて、7時半には職場に出勤している。

 2年前には地方都市の支店長となり、単身赴任となった。1人暮らしをはじめた頃は、妻が用意してくれた2合炊きの電子ジャーで米を炊き、それを小分けにして冷凍していた。平日の夜はそれを解凍して温め、インスタントみそ汁とコンビニやスーパーで買ったコロッケや煮物、ポテトサラダなどを食べていた。

 しかしそのうち、1人で食べる食事が、意外に不経済だと気づき、近所の居酒屋で夕飯を食べるようになった。バランスに気をつけ、枝豆、冷や奴、刺身、サラダなどを注文していたものの、常連になってくると店側が勝手につまみを用意してくれるようになった。1人2人と言葉を交わすなじみの常連も増えてきた。マスターが作るメニューには書いていない、旬の食材を取り入れた酒肴は、妻の手料理よりもはるかに旨かった。

 “真面目一本やり”だったSさんにとって、「会社の帰りに飲み屋に寄る」というだけで十分人生が満ち足りた気がした。「仕事以外の友人を持つことで人生が豊かになる」とはこういうことなのだと実感した。

 居酒屋のマスターと常連でつくる『ヘラブナ釣りの会』にも、自然の流れで参加するようになった。趣味のなかったSさんにとって、釣れても釣れなくてものんびり釣り糸を垂らし、日がな一日水面を見て過ごすことがこれほどまで癒しを与えてくれるとは思わなかった。

 月2回の釣り会には必ず参加した。最初はマスターの道具を借りて釣りに行っていたが、Sさんは給料日のたびに道具やウェアを少しずつ揃え、どこから見ても“立派な釣り師”になっていった。

ストレスはあまりないのに
突然の胃痛に襲われる

 最初の兆候が訪れたのは沼に釣り糸を垂れているときだった。コンビニで買ったおにぎりとビール。いつもの昼食を食べた4時間後。そろそろ日も傾きかけた頃に襲ってきた。