去る5月6日、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁が、会見で「ECB理事会は政府債購入という選択肢については討議しなかった」と発言するや、翌日から世界の株式市場、金融市場の動揺が始まった。簡単に言えば、中央銀行が金融機関の保有する国債を買ってくれれば、手に入れたおカネで新たに国債を買うことができる。トリシェ総裁の発言はこれを否定したのである。

 市場の動揺に背中を押されたかのように、EU(欧州連合)の緊急財務理事会は、最大で4400億ユーロにも達する融資制度の創設で合意。ECBも手のひらを返したかのように、国債の購入を開始した。だが、その効果は数日しか持たず、その後も世界の株価は大きく下がり続け、欧州では銀行間取引市場の動揺が続いている。

 こうした大規模な支援策の発表にも関わらず、なぜユーロ安、世界の株安に歯止めがかからないのか。果たして、このユーロ動乱は、08年秋の金融危機・世界同時不況へと発展するのだろうか。

ギリシャの財政危機は
ユーロ版サブプライム問題

 「今回のユーロ・ギリシャ問題は、3年前のサブプライム問題と同じような構造」と指摘するのは、みずほ証券の高田創・金融市場調査部長だ。周知のように、ユーロ危機の発端はギリシャの財政危機である。財政赤字が大きくなり、国債の元利金が返せなくなるのではないかというデフォルト懸念が市場に広がった。