ある自動車業界関係者が筆者にこう耳打ちしてくれたのが強く印象に残っている。「計測学的に言っても、もはや(10.15基準の)カタログ値は全く意味をなさない」

メディア、アナリストはなぜ見て見ぬフリなのか

 こうした状況がなぜメディアで報道されないのか。「社内の広告部門からの要請で、取り上げたくても取り上げられない」(某テレビ局報道幹部)という声は少なくない。特に広告収入の落ち込みが激しいテレビ、新聞は、重要クライアントである自動車メーカーに気兼ねし、燃費の「内外格差」に触れようとしない。

 自動車評論家やフリーのジャーナリストはどうか。「新車発表会に呼んでもらえなくなる上に、広報車の貸し出しも間違いなく断わられる。メシの食い上げは確実」(ベテランのライター)という状況があり、やはり書きたくとも書けない、という事情がある。

 では、多数の自動車アナリストを擁する証券業界はどうか。こちらも「アナリストミーティングへの出入り禁止は確実」(中堅証券)との声が聞こえてくるほか、「引受部門が干される」(銀行系証券)など、株式・社債等のアンダーライティング(引受)業務に悪影響が出るとの声が漏れてくる。さらには、「大手自動車、系列部品会社の年金運用からの発注が途絶える」(国内系運用会社)ことへの警戒もある。

 このようにメディア、アナリストらの大半は見て見ぬフリをするしかない状況にあるのだ。

 筆者は、「10.15燃費基準」、特に国産車のデータは全く信じていない。産業全体の下支えのため、エコカー減税を継続するのはアリだと思うが、その基準となるデータに信憑性がなければ、結果的に消費者を欺くことにはならないだろうか。