軽減税率合意で消費税の矛盾はむしろ拡大した報道は軽減税率対象の線引き問題に集中しているが、消費税構造の合理化も重要な問題である。

 消費税の軽減税率について、自民、公明両党の合意が成立した。しかし、課題は数多く残されている。

 報道は、軽減税率対象の線引き問題に集中していた。そして、政治的な取引によって非課税枠が拡大されたことを問題視する論調が多く見られた。

 確かにそれは重要な問題だ。ただし、消費税構造の合理化も、大変重要な問題である。それにもかかわらず、この問題には手がつけられていない。制度の矛盾は、むしろ拡大した。

免税、簡易課税制度が残ることで
制度の問題は解決せずさらに拡大

 自民、公明両党が12月12日にまとめた合意文書では、つぎのようにされている。

・2017年4月1日に消費税の軽減税率制度を導入する。

・21年4月にインボイス(税額票)制度を導入する。それまでの間は、簡素な方法とする。

 もう少し詳しく言うと、つぎのとおりだ。

(1)現在、売上高によって前段階の税を推計する簡易課税制度があるが、売上高5000万円以下の中小事業者には、17年4月以降も認める。17年4月からは、軽減対象品目の比率についても推計を認める。

(2)売上高1000万円以下の零細事業者については、17年4月以降も免税制度をそのまま残す。

(3)税額票の導入から6年間は、免税事業者から仕入れた場合でも、税額控除を受けられる。

 上記の合意内容で最も問題なのは、免税業者制度や簡易課税業者制度が残ることである。日本の消費税制度にはインボイスがなく、転嫁が完全にできない場合があるので、それを補うために、免税制度や簡易課税制度が導入されていた。

 本来は、インボイスを導入することによって転嫁を容易にし、それによってこれらの制度を廃止すべきであった。これらが残ることによって、消費税制度の問題点は改善されず、むしろ、以下に述べるように、問題がさらに拡大することになった。