今回は、「食生活の影響」と「引きこもり」との関係について、心理栄養学を唱える専門家の観点から、取り上げてみたい。

「エネルギー不足」と「引きこもり」には
深い関連性がある?

「朝、起きられない。家を出られない。やる気が起きない、といった引きこもりの症状は、身体を動かすエネルギーの素が、十分に摂れていないからではないか」

 こう指摘するのは、「引きこもり」現象と食生活との関係について関心をもっている、岩手大学名誉教授の大沢博氏。『心の病と低血糖症』(第三文明社)など数多くの著書で知られる、心と栄養の関係の研究者だ。

 大沢氏が、心の問題と食事との因果関係について着目したきっかけは、校内暴力が増えた80年代のことである。

「なぜ少年たちは荒れるのか?」「すぐにキレる彼らは、どんな食事をしていたのか?」

 そんな疑問を抱き始め、ある少年院で調査した。すると、暴力行為に走る少年たちには、食生活の面で、ある一定の共通傾向があることがわかったのだ。

 大沢氏は、「引きこもり」については、食生活との観点から、次のような仮説を立てた。

 厳しい雇用環境の中、働き過ぎなどによる職場でのストレスは、ピークに達している。一方で、ネットなどにハマって、昼夜逆転生活を送るようになり、朝食を摂らず、コンビニ弁当やカップラーメン、炭酸飲料などの摂取が増加。連日、食事を安易に済ませるようになると、ストレスはさらに過剰して、悪循環に陥っていく。食はお腹を満たすだけで、ビタミンやミネラルが不足しがちだ。

 そんな環境の中で、「引きこもりやうつ、不可解な事件の背景には、低血糖症の人が、かなりの割合で存在しているのではないか」と、大沢氏は推測する。