「一億総活躍相」とは、
「世論調整担当相」である

 だが、それでも安倍政権は参院選で勝利するだろう。アベノミクスは国民の「消極的な支持」を受け続ける。一見強引に見える安倍政権なのだが、意外なほど世論の動向に敏感に対応しているからである。

 例えば、加藤勝信一億総活躍担当相だ。どう英訳するのかわからない仰々しい肩書だが、実はそれ以外にも、「女性活躍担当」「再チャレンジ担当」「拉致問題担当」「国土強靱化担当」「内閣府特命担当大臣(少子化対策男女共同参画)」の7閣僚を兼任している。しかし、1つ1つの担当業務は、全く関連性がない。身体がいくらあっても足りないように見えるし、これで問題なく業務を遂行できるのかと思う。

 だが、多分大丈夫なのだろう。なぜなら、これら7つの業務には「国民の支持を受けやすい課題」という共通点があるからだ。加藤氏は「支持率調整担当相」なのである。首相官邸に陣取って、支持率が下がりそうになったらタイミングよく国民に受ける政治課題を出していく役割だ。それは、加藤氏が官房副長官時代から変わらないものなのだろう、ただ、言えることは、加藤一億総活躍相の存在が、安倍政権の世論重視の姿勢を示していることだ。

世論の動向に敏感な安倍政権は、
野党が取り組むべき「女性の活躍」を先取りしている

 加藤一億総活躍相は、内閣支持率回復のために「女性の活躍」焦点を当てた。「17年度末までの保育施設の追加整備量を『40万人分』から『50万人分』へ拡大」「非正規雇用者の育児休業取得の促進」などだが、ここでは「三世代同居で所得税など優遇」に注目する。

 子育て支援の一環として、親世代との同居を目的とした改修工事の費用について、所得税や相続税を軽減するというものだ。世代間の助け合いで子育て負担を緩和すれば、出生率低下に歯止めをかけられるということだ。ところが、これが新聞報道されると、ネット上で「そんなことより保育所を増やせ!」「同居できない人はどうすりゃいいんだ!」「介護施設を増やせ!」と女性が一斉に不平不満の声を上げたという。

 ところが、それから2週間ほど後に、安倍政権は「保育の受け皿の確保、新婚夫婦や子育て世帯の公的賃貸住宅への優先的な入居や家賃負担の軽減、介護施設の増加」といった政府の「緊急対策」の一つとして「三世代同居案」を発表した(『「三世代同居」は最高の子育て支援策?』、日経ビジネスオンライン)。これは安倍政権が、ネット上の反応に非常に敏感に対応しながら政策を進めている一例である。