社会保障改革は支持率が高くないとできない課題なので、現政権にこそやってほしい。ここでスルーされると、改革を実行可能な政権はしばらく出てこないのではないか。10年後にやろうとしたら今の倍以上難しいと思う。その意味では、今は“痛み”を伴う改革が実現できる、珍しい政権なんですよね。

小黒 本当にその通りですね。昨年打ち出された新たな財政再建計画で、元々あった「2020年にプライマリーバランス黒字化」という目標に加えて、2015年に約3%だったプライマリー赤字を2018年に1%程度に持っていく、という新しいターゲットを作った。同時に、国の一般歳出の実質増を2018年まで3年間で1.6兆円に抑制する、という話が出てきた。

 2016年は、その歳出改革の1年目です。3年間のフレームの中で、ここでどれだけ踏み込んでいけるのかが、2年目に繋げていく上で非常に重要だと思います。一番大きな改革の弾は、やはり社会保障です。

飯田 社会保障費は、実質・名目ともに所得と連動する部分があるので、成長の如何にかかわらず、現在の社会保障費の増加ペースだと2045年くらいまでずっと増税を続けないといけない。2017年の消費増税どころでは済みません。小黒先生も別のところでおっしゃっていましたけれども、年金の積立方式への移行というのを、真剣に考える時期に来ていると思います。“損切りは早く”というのと同じです。それができるめったにない政権ですので、ぜひやってほしい、と。

「財政再建計画は踏み込み不足」
「時間をかけてゆっくり進めるべき」

──財政再建、歳出改革に関しては、政府の計画は「甘すぎる」という意見もありますし、逆に「機械的にキャップをはめるべきではない」という意見もあります。これについてはどうお考えですか。

小黒 まだ踏み込み不足だと思います。理由は非常に単純です。

 政府が出している「中長期の経済財政に関する試算」(2015年7月)では2つのシナリオを出していますが、「経済再生ケース」では実質2%程度の経済成長率で2023年度まで行くことになっている。しかし、ここ10年間くらいの実質経済成長率は0.8%。潜在成長率は、内閣府自身も足元で0.5%くらいだと見積もっていますし、日本銀行の見積もりでは0.3%くらいです。ほとんどゼロ成長になっているわけです。

 仮にそれがいきなり2%に上がったとしても、2020年度で6.2兆円のプライマリーバランス赤字という推計になっている。しかも消費税は2017年4月に引き上げられるのが前提条件で、この推計では軽減税率の導入で発生する約6000億円の財源不足分は含まれていません。そうした現実を考えると、やはり踏み込み不足と言わざるを得ない。

 年金改革は、飯田先生がおっしゃったようにもっと様々な施策をやっていくべきですが、実際に社会保障の分野で最も膨張していくのは医療と介護です。2015年の医療・介護費用は約50兆円だったと見積もられていますけれども、それが2025年になると75兆円になる。10年で25兆円も膨らむ。