筆者は今年の4月から獨協大学で「金融資産運用論」という授業を行っている。学部生(2~4年生)を相手に、資産運用のあれこれを説明しているのだが、先日、いわゆるポートフォリオ理論の代表的な理論であるCAPM(資本資産価格モデル)を説明した。むろん、資産運用の説明ということになるとはずせない内容だ。

 CAPMはノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープらが考案した理論だが、市場に存在するすべてのリスク資産を時価総額のウエートで保有する「市場ポートフォリオ」がリスクとリターンの効率において最も効率的なポートフォリオであることと、個々のリスク資産の期待超過リターン(超過リターンとは安全資産のリターンを上回るリターンのこと)が市場ポートフォリオに対する感応度であるβ(ベータ)値に比例することが主な結論だ。

 この理論を説明しながら思ったのは、いささか僭越ながら、「途中までは正しいが、その先はインチキだな」ということだった。
もちろん、学界で認められている立派な理論なので、教科書に書いてある論理そのものに誤りがあるわけではない。問題は、仮定の現実性にある。

 CAPMの考え方で、これは正しいから、個人の資産運用にも取り込むべきだと思うのは、分散投資したポートフォリオを前提としてリスクを考えるべきことと、効率的なリスク資産のポートフォリオと安全資産の組み合わせでポートフォリオをつくればいいということの2点だ。この2点は、現実に当てはまるという意味で十分頑健な、いわば「強い理論」だ。