景気の影響は受けないと言われ続けてきたゲーム業界。だが、業界大手バンダイナムコゲームスを傘下に抱えるバンダイナムコホールディングスは、2010年3月期決算において299億円の当期赤字となるなど、経営は依然厳しい状況が続いている。その一方で、アップルの携帯端末「iPad/iPhone/iPod(touch)」やブラウザゲームなど、家庭用ゲーム機以外の市場も活発化し、ゲーム業界各社も対応を迫られている。今後の見通しについて、バンダイナムコホールディングス兼バンダイナムコゲームス社長の石川祝男氏に話を聞いた。(聞き手・構成/ジャーナリスト 石島照代)

バンダイナムコ 石川祝男社長インタビュー<br />「クリエイターたちがヒット製品を生み出す<br />環境づくり、風土づくりが私の使命」石川祝男(いしかわ・しゅくお)
1955年山口県生まれ。関西大学文学部卒。旧ナムコ(現バンダイナムコゲームス)一期生。2005年副社長を経て、2006年、ナムコとバンダイの経営統合で誕生したゲーム事業部門会社、バンダイナムコゲームス社長。2009年バンダイナムコホールディングス社長(現任)、2010年バンダイナムコゲームス社長。

―2010年3月期決算は299億円の当期赤字となりました。希望退職の募集も行いましたが、その効果は?

 2010年3月期の赤字はご指摘のとおり体制の見直しに伴う費用、一部子会社の今後の事業計画を厳しく精査した結果、のれんの減損処理、閉鎖を予定しているアミューズメント施設の店舗等にかかる損失などを含んだ数字です。大変つらい経営判断でした。従業員に希望退職の募集を行うような事態を招いた責任は、経営者である自分にあります。今後は、組織がより迅速にかつ臨機応変に動けるよう、組織をリードしていきます。

―それに加え、1年ぶりの社長復帰には、業界内外から驚きの声が上がりました。復帰から3ヵ月目に入りましたが、現在の心境は?

 先に言っておきますけど、戻ることを予定していたわけではないですよ(苦笑)。親会社の社長になると決めた時点で、絶対帰らないとも決めていましたしね。状況として、そうすることがベストであると判断し、親会社の社長と兼任することになりました。心境の変化は、昨年すでにホールディングスもゲームスと同じ敷地内に移動していたので、特にないです。

 状況の変化というのは、まず自分がゲームスを離れた時と今では、ゲーム業界を取り巻く環境が違いすぎること。鵜之澤(伸副社長)もよくやっているけど、経営における決断時間をより早めて、経営効率を今まで以上にあげなきゃいけない状況になってきている。つまり、一人でやるよりもふたりでやった方がより早いと、そういうことです。