景気にはようやく「緩やかな回復」が認められるようになり、巷では局地的に消費が復活してきた。それに伴い、不況下で「圧倒的な安さ」を武器に独り勝ちを続けてきたアパレル業界も、新たなフェーズへと移りつつある。王者から伏兵までが名乗りを上げるファストファッション各社の「夏の陣」を、一足先にリサーチしてみよう。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

今夏の課題は女性ニーズの掘り起こし
ユニクロとしまむらの微妙な「差」とは?

 ファーストリテイリングの発表によれば、衣料専門店『ユニクロ』の5月の売上高は、前年同月比3.1%増と好調だった。その要因としては、セールによる商品喚起のほか、低単価の夏用肌着を充実させたことが挙げられる。

 厳密に言えば、単価が低いため客単価は3.5%ほど減っている。だが、それを補って余りある集客を実現したわけだ。

 本格的に梅雨を迎え、消費者はサマーシーズンへの「衣替え」を始めている。景気が回復基調にある現在、季節の変わり目が大きな商機となるアパレル各社は、商機を掴もうと「あの手この手」を模索中である。

 だが実は、ここにきて各社の業績には、微妙な差がつき始めている。裏を返せば、これまでのように「安ければ大量に売れる」というトレンドに、「揺り戻し」の兆候が出始めているのだ。

 これまで低価格をウリにしてきたアパレル各社は、夏商戦に向けてどのような戦略を練っているのだろうか? 足許をリサーチしてみよう。

 まず、相変わらず独り勝ちを続けているのが、冒頭で述べた『ユニクロ』だ。売れに売れている低単価夏用肌着とは、具体的には女性用衣料品「ブラトップ」がラインナップの大勢を占めている。