これまで実績がなかった仕事を新たに受注することは、難しいことである。本来、それができる社員は「優秀」と評価されるべきだろう。

しかし、それを認めない人たちがいる。会社とは、つくづく複雑怪奇なところだ。

 連載20回目は、放送局からテレビ番組の制作を受注することに成功しながらも、社内で評価されるどころか潰されていく、番組制作プロダクションの若きプロデューサーを紹介しよう。

 あなたの職場にも、このような社員がいないだろうか。

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■今回の主人公――はい上がりつつある「負け組社員」

 三井哲夫(仮名・28歳)

 テレビ局へディレクターを派遣する、社員数約40人の番組制作会社(本社:東京)に勤務。番組制作部に正社員として勤務。名刺には「プロデューサー」と書かれてあるが、番組制作の実績はない。実は、会社そのものに番組制作の経験がない。そんな無名の会社でありながら、番組の企画を放送局に持ち込んで成功したことから、問題に巻き込まれていく。

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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)

弱者にはつけあがる一方のワンマン社長
追い詰められる「28歳のプロデューサー」

「暴走するから赤字になったんだ!」

 社長の石本(42歳)は、ビデオ編集室に三井を呼びつけた。そして、甲高い声を上げた。