住商が特損、日本も資源バブル崩壊と無縁ではいられない

 住友商事が新年早々、770億円の特別損失を発表した。アフリカのマダガスカルで進めていたニッケル開発が失敗した。

 昨年、シェールオイルへの投資で3100億円の特損を出した住商。「またか!」という反応や、遅れて資源に触手を伸ばした危うさが話題になったが、失敗は住商に留まらないだろう。これからあちこちで投資案件の破綻が噴き出しそうな状況だ。

 低金利が長く続くと、必ずどこかでヘンなことが起きる。金融資本主義が広がった世界の宿命ともいえる。2008年から始まった「かくも長き金融緩和」が終わろうとしている。米国の連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利に終止符を打ち、マネー潮流に異変が起きた。低金利が覆い隠してきた不採算プロジェクトがいよいよ表面化する。住商のニッケル事業はその先触れだろう。「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という言葉があるが、年初から始まった世界的な株安は、これから始まる混乱を暗示している。

資源投資の「大博打」
背景に長すぎた金融緩和

 住商が失敗したマダガスカル開発のキーワードは、「資源」「アフリカ」「国際共同」だ。ニッケルは電気部品や建材に欠かせない金属。50円硬貨などに使われ、身近な存在だがレアメタルの一つに数えらえている。硬貨にしているのは国家備蓄の一形態で、必要になったら回収し、鋳潰して産業用に充てることができる。中国の経済成長で需要増が見込まれ、今世紀に入り戦略資源と見られていた。

 住商がマダガスカルの鉱山に投資を決断したのは2007年、世界経済は絶好調でレアメタルに注目が集まっていた。そのころアフリカは世界に残された市場経済の処女地として投資ブームが始まろうとしていた。最貧国の一つだったマダガスカルは、有望な地下資源に目をつけた世界銀行が後押して2001年から鉱山開発が始まった。

 だが住商は単独で投資する自信はなかった。なじみのないアフリカの資源開発は危険が付きまとう。ニッケルでは実績のあるカナダの精錬会社と組み、韓国の資源開発公社と共に参加した。危ない橋を一緒に渡ったのである。

 だが巨大プロジェクトは難航。予定した2010年になっても工事は終わらず、工費は予定の倍以上の72億ドル(8700億円)に跳ね上がった。

 完成が遅れているうちにニッケル市況は冷え込む。2010年に1重量ポンド=10ドル前後だった国際価格は、今では半値以下の4ドルに下がった。頼みにしていたカナダの精錬会社が赤字となり、国際会計基準に沿って減損処理が迫られた。鉱山の稼働は十分とは言えず損失は更に拡大する恐れがあるという。