「ヨイトマケの唄」は民放で放送禁止になっていた。NHKはOKである。

 民間放送連盟の倫理委員会が、これを差別の歌とした。

 貧しい家の子どもを汚いものと見ているとか、ほとんど言いがかりにしか聞こえないような難癖をつけられた。

「あなたがたの心の中に、そういった意識があるから、差別に聞こえるんだ」と美輪は言い返したが、差別を直視しなければ差別がなくならないことは自明の理だろう。

 長崎出身の美輪は東京に出て来るまで差別など知らなかったという。

「私は幼稚園でも小学校でも、肌の色や目の色が違う人たちと机を並べていたんです。つまり、韓国人や中国人であったり、二代、三代前がオランダ人、ロシア人といった家の子どもだったんですね。そういったことが、ごくごく普通で、当たり前の環境だったんです。ですから、差別なんてことがあるのだとは全然知らなくて、東京に来た時、なんて野蛮なところなんだろうと思ったんです」

 美輪は長崎に生まれて本当によかったと思った。

「私は人を見る時、容姿や容貌、年齢、性別、国籍、服装、肩書といったことを一切吹っ飛ばしちゃうんです。私の実家はお風呂屋をやっていたんですけど、子どもの頃、お風呂場をのぞいてみると、裕福な身なりの人であっても、裸になると雑巾のしぼりたてみたいな気の毒な裸をしていたり、その反対に、貧しい身なりのヨイトマケのおばさんが彫刻みたいな素晴らしい身体をしているわけです」

 こう語る美輪は、子ども心に「着ているものって何なんだろう」と思い、人を見る時に、着るものを見ないで、その人の裸を見る癖がついた。本当の姿、中身を問う習性を身につけたのである。