忌まわしい戦争の時代への危機感

 美輪は10歳で敗戦を迎えるわけだが、その直前に軍人たちが、「みんな、玉砕の覚悟をしろ。1億玉砕、天皇のために最後の1人になるまで戦って死ぬんだ」と言うのを聞いて、変だ、と思った。

 もし、1億玉砕で最後の1人まで死ぬということなら、皇室も全部滅びて、宮城も丸焼けになってしまう。それで美輪は、「1億玉砕というのは、天皇陛下も皇后陛下も死ぬってことですか?」と尋ねた。途端に、「馬鹿者!不敬である!」と怒鳴られたが、美輪は、「不敬はテメエだろう」と思った。

「そう言ったんですか?」と私が聞くと、美輪は「さすがに、そこまでは言えません」と笑った。

 言ったら殺されるからだが、向こうがタジタジとなったのは表情でわかったという。

 石原慎太郎についてどう思うか、と水を向けると、美輪は「特に話題にするほどの方でもないかと思いますが」と文字通り一笑に付し、「いま、大阪市長の橋下徹という人の子分になっていますよね。まあ、どちらが親分で、どちらが子分かはわかりませんけど」と私がさらに尋ねると、「佐高さん、何か私に言わせようとしていませんか」と逆に問い返され、「自分の言いたいことを、美輪明宏が言っているというふうにしようという魂胆がありませんか?」と叩き込みを食わされて、私が「いえいえ」と否定すると、「けれども、そうはいきません」と終了のゴングを鳴らされた。

 話題を転じて、「あの、美輪さん、ちょっと危ない話なんですけども」と切り出したら、「佐高さんのお話は、いつも危ないお話ですよね」と笑われたが、いま、暗殺して世の中が変わるような政治家はいない。もちろん、暗殺は否定するが、安倍晋三にしても、とてつもなく小物なのである。

 2013年秋のコンサートの「御あいさつ」に美輪はこう書いている。

「今、世の中は、あの忌わしい第2次世界大戦争の前あたりに似て来ています。新聞ラジオ等のメディアが、軍に協力して、国民の戦昂揚をあおり立て、軍国主義国家になり、勝ち目のない無知無謀な戦争に突入して、案の定、日本はボロボロの敗戦国になってしまったように、自民党に圧勝させ、憲法9条を変えさせ、軍隊をつくり、軍事国家にしようとしている風向きに思えてなりません」