一方、国会の議席数が与野党伯仲した時は、野党が政権奪取を意識するようになる。財政再建については、絶対反対ではなく、現実的な対応を模索した。その結果、自民党と野党の間に話し合いの余地が生まれて、消費税論議が前進した。

 これは、政権交代がほとんど現実的でなかった55年体制下で生じた、日本独特の政治力学である。政党の役割は、その支持者の意向を法律にしていくことだ。そのために、普通は政権獲得を目指すものだ。

 しかし、自民党一党支配体制下では、野党はずっと支持者の要望を実現できないので、政権獲得以外の方法で支持者の意向を実現することを考えねばならなかった。それが、「国会で法案の修正を勝ち取って支持者の意向を少しずつ実現する」ということだった。

 そして、自民党も野党の法案修正協議に積極的に応じてきた。常に政権の座にあっても、すべての法案を無修正で通したら、野党の支持者から猛烈な反発が来る。また、自民党支持者からも横暴だと批判される。だから、自民党は法案の根幹に関わらない部分では積極的に野党との修正協議に応じるようになった。

 これには、自民党にとって野党支持者からの支持獲得の可能性が広がるというポジティブな面もあった。その結果、重要な政治課題については、自民党が単独で実現を強行せず、野党との合意を得られるときのみ前に進めるという慣習が出来上がったのだ。

 自民党政権が財政再建の必要性を認識しながら、15年間も本格的な消費税論議を行えず、消費税増税に本来反対の立場であった菅内閣が、その議論を現実的な政治課題として復活させた。これは、自民党長期政権下で確立した日本政治独特の慣習による政治力学の流れで説明可能だ。

 そして、それは安全保障問題を巡る政治力学と同じであり(第29回)、民主党政権が消費税のみならず、憲法改正など自民党政権下では国民的合意を得られなかった、重要な政治課題を進展させる可能性があることを示唆している。