5回にわたってお届けしてきたこの連載も、今回がいよいよ最終回。最後に取り上げるのは、アスクル株式会社です。

 アスクルは、紙のカタログやウェブサイトに掲載されたオフィス用品を注文すると、当日または翌日には商品が届くというサービスを展開しています。みなさんは、職場でアスクルを利用したことがあるでしょうか? 使ったことがないという方でも、取扱商品の豊富さ、スピーディーに配送される利便性など、アスクルが展開するサービスの特徴はご存じでしょう。

 アスクルは「お客様のために進化するアスクル」を企業理念に掲げていますが、創業当初からこの理念に基づいてユーザー視点でビジネスモデルを進化させ、事業を大きく成長させてきたことは注目に値します。

 私は長年、同社のビジネスモデルに関心を寄せてきました。拙著『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』でもアスクルについて大きく取り上げ、ビジネスモデルを分析していますが、アスクルのビジネスモデルはその後もさらに進化を続けているのです。

 そこで今回は、本の“続き”をお送りしたいと思います。使用するのは、企業のビジネスモデルを見える化して儲ける仕組みを見抜く手法、「ピクト図解」です。

アスクルの変遷をたどる

 まず本を読んでいないという方のために、アスクルが創業時からどのようにビジネスモデルを進化させてきたのかをおさらいしておきましょう。

 みなさんは、アスクルが大手文具メーカーのプラスの事業部としてスタートしたことをご存じでしょうか。1993年、アスクルはプラスの通信販売事業部として生まれました。当初は取扱商品の9割がプラスの事務用品で、メーカーの直販サービス部門のような位置づけだったと考えられます。ビジネスのターゲットは、従業員30名以下の中小企業。文具店の外商が出入りしないような、規模の小さな会社のニーズを拾うのが狙いでした。

 ところがアスクル事業が成長するにつれ、ユーザーから「プラス以外の商品も届けてほしい」「文具以外の商品もほしい」「名刺や会社ロゴ入り封筒などの印刷サービスにも対応してほしい」といった声が高まってきます。