かんぽの宿の売却を巡って鳩山前総務相が日本郵政の西川善文社長を批判して始まった問題は西川社長の留任、鳩山前総務相の更迭という、率直に言って意外な決着になった。本連載の原稿で筆者はこの問題を西川氏の自発的辞任くらいが落とし所ではないかと書いたのだが(『「かんぽの宿」勝負は西川社長の負け。但し、勝者は“総務省”』4月8日)、この見通しは外れた。

 そもそも人事に絡む予想は難しいが、小泉純一郎氏、中川秀直氏ら当初の郵政民営化の推進者達の巻き返しが強力だったことと、西川氏自身がかくも頑強に粘ったことの二点が意外だった。だが、実のところ、本当に西川氏は今後も日本郵政の社長にとどまり続けるのか、筆者は、まだ半信半疑の気分でいる。

 この問題に関する世間の反応は今後幾つか調査結果が出てくるだろうが、毎日新聞社が鳩山前大臣の更迭を受けて6月13日、14日に行った調査では麻生内閣の支持率は5ポイント減の19%に落ち込んだ。これまでの最低である11%までにはまだ少々の余裕があるが、麻生内閣としては、民主党の小沢一郎前代表の秘書逮捕で盛り返した支持率の貯金を本件でほぼ吐き出したと見ていいだろう。

 鳩山氏を更迭した麻生首相の判断に対しては67%が不支持で、支持は22%に過ぎない。いつあるにせよ総選挙が近いこの時期に、西川氏が社長にとどまって野党と鳩山邦夫氏両方からの追及を受け、この件が話題になり続けることは、自民党にとって大いに不利だろうし、その不利はいわゆる「小泉チルドレン」をはじめとする小泉氏、中川氏らに近い議員達の選挙にも及ぶだろう。

 本件に対する新聞各紙の論調を社説で比較すると面白い。筆者が購読しているのは「朝日」「毎日」「東京」「日経」「読売」「産経」の6紙だ。物事に対する意見を何でも右・左で分類できる時代ではないが、大まかに言って、上記の挙げた順に「左」から「右」方向に意見が並ぶことが多いのだが、今回は並びがバラバラなのだ。

 詳しくは各紙のWebサイトで13日の「社説」を読んでみて欲しいが、西川氏に厳しかったのは順に「読売」「毎日」の2紙だった。「読売」は「日本郵政は体制を一新せよ」と西川社長の退陣を主張している。「毎日」も「今回の件に関しては鳩山氏の主張に分があると考える国民が少なくないだろう」と述べて、麻生首相の決断力・指導力の欠如を批判しつつも鳩山氏寄りだ。