2001年3月期に、会計ビッグバンの流れに沿って、退職給付会計が導入された。その前後に、企業の「隠れ債務」が明らかになると、ちょっとした騒ぎになった。実際、バブル崩壊後の株価の低迷で隠れ債務が膨らんでいる時期であり、企業年制度の変更や人事制度の改革などが相次いだ。

 IFRS(国際会計基準)が導入されれば、退職給付会計もさらなる変更を迫られる。一言で表せば、隠れ債務がより明確になる、というよりも、隠れていることができなくなるのだ。

退職給付の積み立て不足が
隠れ債務と言われるワケ

 退職給付会計とは、将来、退職する従業員に支払わなくてはいけない退職給付(退職一時金・企業年金)の総額と、その費用を捉えようとする会計処理のことである。IFRSが導入されれば、この退職給付会計はどのように変わるのだろうか。退職給付会計自体がかなり複雑で難しいのだが、ごく簡略化した図を使って、説明しよう。簡単に言えば、次のように処理されている。

隠れ債務で純資産が激減する<br />退職給付会計の恐るべきパワー