「最近もの忘れが激しい」人も思い出せる記憶の引き出し方

 次のTo Do リストを覚えてください。

 1、メールを送る
 2、ホワイトボードマーカーを購入する
 3、客先にお礼の電話をする
 4、プレゼン用の資料を作成する
 5、銀行にお金を振り込む

 日常生活の中で、ついうっかりやるべきことを忘れてしまった経験ってありませんか。家の2階に上がってきたのはいいけれど、何をしに来たのか忘れてしまったり、家の中にしまった物の在りかを忘れたり。また買い物から家に帰ってきてから、「しまった!あれ買うのを忘れた!」という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。

 これらはまだプライベートでの話なので、ちょっと困ったぐらいで済みますが、仕事上でのついうっかりは致命的なミスにつながることも。できることならば避けたいものです。

使わないと落ちる「思い出す力」

 では忘れる原因は何でしょう。年齢のせいでしょうか。加齢によって能力が衰えたのでしょうか。実は覚える力自体は年齢を重ねても、病気でもない限りあまり落ちないことがわかっています。それではなぜ物忘れをするのかというと、実は覚えたものを思い出す力が低下している可能性があるからです。

 考えてみてください。記憶力とは覚える力だけを指す言葉ではありません。覚えてそれを思い出すことができてはじめて記憶力と言えるのではないでしょうか。

 この「思い出す力」は、使わないとだんだん衰えていくことがわかっています。プライベートや仕事のスケジュール、タスクなどの管理をほとんど機械に頼っている現代人は特に要注意です。便利になったのはいいけれど、それと引き換えに人間本来の能力である記憶力が低下してしまったのでは割に合いません。

 しかしこの思い出す力も前々からお伝えしている脳の特性によって、いくつからでも高めることは可能です。連載第1回でもお話ししたように、脳には神経可塑性という性質があって何歳からでも神経細胞を増やすことができ、神経回路も発達させることができることが最近の脳科学でわかっているからです。