マッキンゼーの研究チームが、仕事の自動化に関する分析を報告。米国で完全に自動化できる職業は、推計によれば現時点で5%未満にすぎない。しかし多くの仕事で、週の1.5日分の作業を自動化できるという。機械に「職」が奪われることを案じるよりも、「作業」の自動化で空いた時間をどう使うかが経営課題となる。


「人間か、機械か」という喫緊のテーマは、これまで大量の文章や映像で論じられてきた。機械に軍配が上がり、人間という労働力は敗北すると結論づけるものも多くある。マーティン・フォードの『ロボットの脅威』や、エリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーの共著『ザ・セカンド・マシン・エイジ』などがそうだが、機械が優位だというストーリーを否定するのは非常に難しい。

 この問題をめぐる学者たちの研究も盛んだ。オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フライとマイケル・オズボーンは、米国の職業の47%は20年以内に自動化される可能性があると予測した。その一方で、マサチューセッツ工科大学のデイビッド・オーターは、機械が人の仕事を奪う可能性は著しく誇張されたものだと主張している。

 我々マッキンゼーは、オートメーションが仕事と組織に及ぼす影響について独自の調査を実施しており、最近その成果の一部を報告書にまとめて発表した(英語報告書)。そこで示している最も重要な洞察は、自動化できる「職業」そのものより、自動化できる「作業・業務」を検討したほうがはるかに有益だということだ。

 すなわち、アナリストのレポートから最も役立つデータのみを抽出したり、最新の売上高のレポートを作成したり、倉庫で製品を移動したりといった、個別具体的な作業を機械に任せることである。スマートな機械はすでに、情報の中からパターンを見出したり、人間の発言を理解したり(「先週最も売上げが伸びた場所はどこ?」という質問に答えるなど)、物理的に物を操作したりできることが実証されている。こうした能力が広範な業務に応用されると、ほとんどの職業や組織に影響が及ぶだろう。

 では、職業ではなく作業レベルで自動化を行うことにした場合、何が起こるだろうか。消費財企業でマーケティングを担当する、マネジャーや幹部を例に考えてみよう。