従業員たちの「基礎力」を鍛えることが重要

前回は「QPS(Quality、Price、Service)の組み合わせにより他社との違いを出す」という話をしました。もしお客さまが望む違いを出すことができれば、ライバル企業からシェアを奪うことができるでしょう。

本物の「お客さま志向」を持つ企業は従業員の基礎力が高い小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 お客さまの望むQPSの組み合わせを十分に理解し、それを商品やサービスに落とし込むことが、マーケティングの本質です。その能力をどうすれば得られるかを今回は説明しましょう。

 ピーター・ドラッカーは経営の大きな目的は「顧客を創造すること」と説明しています。ノルマを課してお客さまを増やすということではなく、お客さまが求める商品やサービスを提供した結果、より多くのお客さまに買っていただけるというのです。つまりライバル企業よりも良い、もっと言えば独自のQPSを、ライバル企業よりも先んじて提供することができれば、お客さまを創造できるというわけです。

 お客さまを創造するためには、お客さまが何を望んでいるのかということを徹底して考える必要がありますが、それは言い換えれば、経営者と従業員が「一番厳しいお客さまの目」(=お客さま志向)で自社を見ることができるかどうかということです。

 言葉で書くと簡単そうですが、経営者や従業員が「一番厳しいお客さまの目を持つ」と言ってもそう簡単なことではありません。そのために意識を高める教育をする会社も少なくありませんが、意識教育はなかなか成果が出ません。

 もちろん、意識が高まることはいいことですが、実践に結びつかせるために必要なことは、意識より「行動」です。小さな「行動」の積み重ねによって身につけるものです。

 読者のみなさんの中には武道や茶道、華道のような「○○道」の心得がある方もいらっしゃるでしょう。「○○道」とつくものは、すべて最初は「型」から入ります。「型」を何千回何万回と繰り返すことで、ようやく基礎が身につきます。

 同じように従業員もお客さま志向の「小さな行動」を繰り返し実践していくうちにお客さま志向の意識が身につきます。そしてその小さな行動の積み重ねが基礎力である「思考力」と「実行力」を高めるのです。中堅中小企業が大企業との競争に勝つためには、まず従業員の基礎力を高めるところから始めなければなりません。