「父親が寝たきりになったら自分はどうすればいいのか?」
 「預けるところはあるのか?」
 「仕事は辞めなければいけないのか」

 『介護』という言葉はいつも自分の遠いところにあったように感じていたのに、今は一番近くにある気がしていた。

 そして、週末の営業は部下に任せて、毎週末、実家に帰る生活が始まった。土日は高速道路が渋滞するので、金曜の夜中に東京を出て実家に向かい、月曜の明け方東京に戻る生活を続けた。

 そんな日々が数ヵ月過ぎたころからOさんの身体に異変が起きた。金曜日の朝になると身体が鉛のように重くなり、起き上れないのだ。しかも不眠も続いている。

 最初は疲れなのかもしれないと思っていたが、医師に処方してもらった軽い安定剤だけでは眠れなくなっていた。背中が張って腕をあげることもできない。眠れない夜が続き、Oさんは知り合いの医師を訪ねた。話を聞いたあと医師はこう言った。

「Oさんは自分できちんとやろうとし過ぎていましたね。Oさんが倒れられたら困るのは、お父さんです。お父さんは思っている以上に強い方だと思います。そんなに抱え込まずに、いろいろなサービスを利用したほうがよいですよ。お父さんにとってもずっと家にいるのはストレスです。外の世界に触れた方がよいでしょう。

 たとえば、行かなくなってしまったデイサービスセンターやショートステイにOさんが一度ご一緒してみてはいかがですか。意外に面白いですよ。家族の方が一緒だと意外になじめるものなのです」

 医師の言葉にOさんは我にかえった。

「外に世界に触れ合う」「キレイにする」
お年寄りが元気になる秘訣

 Oさんのなかで、「父親を家できちんと介護したい」と思う気持ちだけが空回りしていた。今は有難いことに介護保険で色々なサービスが受けられる。それを利用することで父親も外の世界に触れ合うことができるし、自分にも時間ができる。それに疲れがたまると仕事にも集中できないので、最近ミスが多くて部下に迷惑をかけていた。