日本語教師としてインドネシアと出会い、2005年からグローバル人材紹介会社で日系企業・ 日本人求職者のサポートを担当するジャカルタ在住8年の長野さん。今年1月14日、長野さんが働くオフィスのまさに目の前でテロ爆発が起こりました。2カ月が経ち、今ようやく日常を取り戻しつつある長野さんが自らの経験を綴ってくれました。
ジャカルタで爆弾テロ事件が起きて約2カ月が経過しました。今ではまるで何もなかったかのように活気あるジャカルタに戻っていて、私自身も遠い昔の出来事のような気がしています。
1月14日にテロが起きたショッピングモール「サリナ」周辺は、まさに私が働くオフィスの目と鼻の先。現場のひとつとなったスターバックスは、私が毎日かよっているカフェです。
あの日もいつものように出勤をした私が体験したこと、感じたことを少しですがこちらに書かせていただきます。まだいろいろな情報が整理されていない状況なので、事実と異なることがあるかもしれません。あくまでも私の感覚です。

1月14日に起きたこと
●午前10時10分ごろ
出社後、メールの処理がひと段落し、パソコンの時計を見て10時過ぎになったなと確認し、スタバのコーヒーを買いに行く。これが私の日課でした。
●午前10時15分ごろ
スタバ入店。顔なじみのスタッフたちが「おはよう、あやこ。いつものコーヒー?」と明るく声をかけてくれました。いつものコーヒーをお願いして、出来上がりを待ちました。スタバ店内はいつものようにほぼ満席で、インドネシア人や外国人でにぎわっていました。まもなくコーヒーを受け取り、オフィスへ戻りました。
その日はお客さんが多く、受け取るまでに10分ぐらいは経過していたと思います。
●午前10時45分ごろ
オフィスに戻って業務を続けていると、「ドーン」と少し小さめ(こもっているというか、遠い感じがしました)の音が聞こえました。社員全員「?」と顔を見合わせたのですが、「交通事故か?」「車がパンクしたか?」ぐらいの音だったので、席を立たずにそのまま業務を再開しました。
その数分後に「ドーーーーーン」。かなり大きな爆音とともにオフィスのガラスが鳴り、震度2ぐらいの揺れを感じました。
このとき、「何かが爆発した?」とは思ったのですが、今まで聞いたことがない音だったので、何だかピンと来ないまま18階にあるオフィスの窓から下の様子を見てみると、メインストリートの交差点にある警察署が爆破されて、近くに数人が倒れている様子が見えました。
それでもまだ「テロ」だとは気づきませんでしたが、社員の誰かが「爆弾だ、テロだ。スタバも爆破されてる!!」と叫んでいるのを聞いて、「え、テロ?!!!!」と、やっと少し状況がつかめてきました。
地震や火事の避難訓練は子どものころから経験していても、テロの対策は何も知りません……。こういう場合はビルの外に逃げたほうがいいのか、あるいはビルの中で隠れたほうがいいのか……判断に迷いました。
日本人スタッフ4名で外に出るべきか、中に残るべきかで話をしている間に非常ベルが鳴り、館内放送で避難命令が出ました。
少しパニックになりながらも、貴重品をまとめ、高いヒールの靴からクロックスに履き替え、なぜかスタバのコーヒーを持って、スタッフと一緒にエレベーターに乗り込みました。手に持ったコーヒーはまだ温かく、買って間もないことを実感したのを覚えています。


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