銀行系、流通系、信販系、メーカー系、中小小売商団体ほか、クレジットカード発行会社・団体400社が発行するクレジットカードの枚数は、2009年3月末時点で3億1,783万枚に上る。05年3月末時点では2億7,338万枚。以来、発行枚数は毎年3~5%程度ずつ伸びを示してきた(社団法人日本クレジット協会調べ)。

 長期にわたる景気の低迷にともない、企業は顧客を囲い込むことに腐心してきた。ポイントサービスはその囲い込み戦略にうってつけのツールであり、今では当たり前のように広まったわけだが、クレジットカード会社はその流れを好機ととらえ、ポイントサービスに与信決済機能の付いた年会費無料の「提携カード」を次々と発行していった。カード発行枚数伸長の背景には、こんな事情が垣間見られる。

これから表面化する法改正のシビアな影響

 ところが昨年来、業界の状況は大きく変わってきた。

 カード会社から突然、自宅に「キャッシングについての変更のお知らせ」「リボ払いの際のご注意」等の書面が送られてきて驚いた方も多いと思うが、これは、2010年6月18日に完全施行された「改正貸金業法」、および10年12月までに完全施行される「改正割賦販売法」の影響によるものだ。

「改正貸金業法」は多重債務の解消を主な目的とした法改正で、それによりカードキャッシング、 消費者金融などノンバンク系のすべての個人借入残高を年収の3分の1までに規制するというもの。

 つまり、これまではカード会社ごとに個別にキャッシング枠が設定されていたが、今後は、カードでのキャッシングも含むその人のすべての借入額に「総量規制」が適用され、たとえば年収300万円の人は100万円しか借りられなくなるというわけだ。

 一方、過剰な与信枠付与の防止を目的として改正された「改正割賦販売法」では、分割払いやリボルビング払いなどのカードショッピング利用に対して、年収 に応じた利用金額が定められた。今回の改正ではボーナス一括払い、分割2回払いもその対象となり、利用可能金額は「包括支払可能見込額=(年収-生活維持費)×0.9」という計算式で算出される。

「信用偏差値」で<br />富裕層争奪戦が始まった

 今のところ、これら法改正による具体的な利用者への影響として、たとえば借入れの際に源泉徴収票や給与明細など、年収を証明する書類を提出する義務が課せられた。これは利用者にとっては大きな負担である。

 しかし、カード利用者に本当に影響が出てくるのはこれからだ。

 今回の法改正によりクレジットカードの審査基準が大幅に見直され、今後はこれまでのように気軽にカードを作ることが難しくなってくることも考えられるため、クレジットカードの持つ「信用力」が以前にも増して重視されるようになる。

 年収の高い人にはさほど影響はないかもしれないが、収入の低い人にとっては厳しい側面も多い改正だ。