設立以来、順調に業績を伸ばしてきたものの前々期は初の赤字決算に転落。しかし社長は、企業が成長し社会的評価が高まったことによる社内の慢心や意識のずれなどを立て直す絶好の機会だと捉え、再度トップダウンによる基礎教育を徹底。1期で黒字に戻し、さらに次の成長への足固めに繋げていった。

規模拡大によって
見えなくなってくるものがある

急成長がもたらした社内のひずみを払拭<br />虎の穴 吉田博高社長
虎の穴社長 吉田博高氏

 当社は設立後、アキバ文化への注目の高まりを追い風に順調に業績を伸ばしてきました。13期の間、ほぼコンスタントに前年比15~20%ずつ毎期の売上を伸ばし、200億円台が視野に入るとともに、業界内のみならず社会全体から認知・評価される企業に育ってきました。

 しかし、それとともにいろんな懸念や矛盾も見え始めてきました。

 全国に店舗を広げ従業員数も800名を超えてくるなかで、会社全体を見通しにくくなってきたのが第一点。そして規模の拡大によって、必然的に高まってきた役割分担や権限委譲という言葉の「任せる」ということの意味がずれてくるようになってきたことがもう一つです。

 たとえば店の品揃えでは、お客様のニーズに目を向けるのがごく当然のことです。でもそれを忘れて自己満足的な商品構成をしがちだったり、また目論見違いになるのが怖くて勇気を持った仕入れができず、大きな販売機会を失ってしまうようなケースも出てきました。

 お客様の期待に応えることが、結果として当社の商機になり業績に貢献することになるので、本来、部門を任せられた従業員は、会社の顔としてお客様にしっかり向き会うという意識が重要です。しかし、それが少しずつ曖昧になってきたんです。