ショーンK問題の本質は「経営コンサルを報道キャスターにしたこと」だ

 「イケメン過ぎる経営コンサルタント」としてテレビ、ラジオなどで活躍していたショーンKことショーン・マクアードル川上氏の学歴、経歴が真っ赤なウソだったことが週刊文春で報じられ、本人もあっさりそれを認め、出演していたテレビ、ラジオ番組のすべてを降板した一連の騒動はご存じの通り。

 多くの人が「ハーバードのMBAホルダーで、いかにもなハーフ顔の国際派経営コンサルタント」だと思っていたショーンK氏の正体が、川上伸一郎という名前の、純粋日本人顔で高卒の「実はイベント司会やナレーションなどが本業のタレント?」としか思えない職歴の人間だった。その落差の大きさに世間はアッと驚いたわけだが、僕の感想は「やっぱりウソだったんだ」というものだった。

 僕が最初にショーンK氏を見たのは、テレビ朝日『報道ステーション』のコメンテーターとして出演していたときのことだが、そのときのテロップで紹介されていた「経営コンサルタント」の肩書きに大きな違和感を感じた。なんというか、経営コンサルタントにしては妙に水っぽすぎたのだ。

どのような業界にもある
その業界独特の匂い

 僕は職業柄、外資系大手ファームのコンサルからフリーのコンサルまで、経営コンサルタント、マーケティングコンサルタント、ITコンサルタント、人材コンサルタントなど、多種多様なコンサルタントを見てきたし、一緒に仕事をしてきた。日本人もいれば外国人もいた。その数は優に数百名。しかし、ショーンK氏のような「匂い」のするコンサルは見たことがない。

 どのような業界の人間もそうだが、業界の人間には「業界特有の匂い」がある。そして、業界の人間は同業の人間のことはすぐに分かる。それも、他業種の人間には分からない匂いまで嗅ぎ分けることができる。

 たとえば僕なら、夜のバーで飲んでいて大手広告代理店の人間が入ってきたら、その人間が電通か博報堂なのかはだいたい分かる。また、独身時代にCAの女の子たちと交流していたこともあり、街中でCAが歩いていたらその女性がCAだとだいたい分かる。しかし、それ以上のことは分からない。ところが、CAの女の子たちは、その女性がJALなのか、ANAなのか、外国キャリアのCAなのか、その区別まで分かると言っていた。そういうものなのだ。

 なので、ショーンK氏の「国際的な経営コンサルタント」という肩書きが真っ赤なウソであるとバレても、僕は「やっぱりそうか」という感想しか持たないが、コンサル業界と縁のない人たちはそのような「コンサルの匂い」など分かるはずもなく、ましてや「報道番組」で紹介されている肩書きがホンモノであると信じてしまうのは当然である。

 その意味で、ショーンK氏を「経営コンサルタント」としてコメンテーターに起用していた報道番組は罪が重い。『報道ステーション』など、今回の騒動をまるで他人事のような伝え方をしていたが、今回の件はショーンK氏が番組降板を申し入れてそれで終わるような話ではないだろう。

 まあ、文春報道を受けてショーンK氏は、レギュラーとして出演していたテレビ、ラジオ番組のすべてに降板を申し入れたとのことだが、その「あまりの潔さ」にも違和感が残る。「まだ何か文春は握っているのではないか?」とまで思わせる潔さであるが、そのあたりは推測さえもできない話なので、深くは突っ込まない。