今回は企業の外にある労働組合の関係者に、高学歴社員が陥り易い「学歴病」の実態を聞いた。話を聞いたのは、労働相談を通じて多くの会社員と接点を持つ、東京管理職ユニオン・アドバイザーの設楽清嗣さん(74)である。

 東京管理職ユニオンは、一般社員だけでなく、管理職も加入できる労働組合だ。通常、社員は管理職になると非組合員となるケースが多い。そのため、多くの管理職は、会社からパワハラや退職勧奨などを受けたときに社内で相談できる相手がおらず、路頭に迷ってしまう。管理職ユニオンには、そんな企業の管理職たちも救いを求めてやって来る。

 設楽さんは、社内の関係者が聞き出すことができない悩める会社員の本音を詳しく知っているため、本テーマの取材に少なからぬヒントを与えてくれると筆者は思った。

 設楽さんいわく、日本でトップクラスの学歴を持つ会社員が労働相談の場に現れると、ある特徴が見えるという。その話を聞くにつけ、筆者にはそこに学歴病の1つの症状が見え、教育界や社会が抱え込む問題にも通じるのではないかという感想を持った。労働相談の現場から、学歴病の実態を浮き彫りにしていきたい。


高学歴者はしゃべりまくる?
労働相談に訪れる悩める社員の特徴

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 設楽さんは慶應義塾大学文学部在学中の1960年、日米安保闘争に参加し、その後中退、労働組合活動にかかわるようになった。1992年、東京管理職ユニオンを結成し、多くの会社員の労働相談や労使紛争を支えた。55年以上にわたり、労使紛争の最前線にいた稀有な存在である。

 設楽さんに、まず東京管理職ユニオンに労働相談に来る会社員と学歴との関係について聞いた。

「相談に来る人は、大企業から中小企業までの管理職が多いので、結果として学歴が高い傾向はあります。仕事熱心で競争心もあるし、話す力も書く力も相対的に高いものがあるように思います。彼らとの労働相談の中で『学歴が低いから会社に辞めるように仕向けられている』という話は聞きません。リストラの際、学歴で辞めさせるか否かを判断する会社は少ないと思います。ここに相談に来る人は、管理職だから狙われているのです。人件費が高く、会社として扱いに困った末に辞めるように仕向けられた可能性が高いです」