ハイテンションの先の心配事

 先の参議院選挙で10議席を獲得し、さらに川田龍平氏の加入で参院に合計11議席を得たみんなの党の動きが賑やかだ。「ハイテンション」といってもいいだろう。

 たとえば、渡辺喜美代表は7月26日、日本外国特派員協会で講演し、次期衆院選に関し「100人以上の候補を擁立し、あわよくば絶対的キャスチングボート勢力を目指す。我々が選んだ相手方が政権を取るということだ」と述べた。必ずしも資金が潤沢ではないみんなの党が、果たして100人以上の候補を立てることが現実的なのかは問題があるとしても、政党として、これから他党と政策実現のための交渉を行う前段階として、この程度の風呂敷を広げて見せるのは悪くない。

 ある世論調査では、首相にふさわしい政治家のナンバーワンに渡辺代表が選ばれた。もっとも、このナンバーワンの座は、少し前までは、自民党を脱党したものの参院選では存在感を示せなかった舛添要一氏だったから、必ずしも縁起のいいものではない。ブームや人気は不安定なものだ、という認識も重要だ。

 また、キャスティングボートという意味では、みんなの党の持っているポジションは必ずしも強力とは言い難い。参院選で民主党が負けすぎたために、「民主党+みんなの党」では参院の過半数を制することができない。鳩山内閣に於ける国民新党の方が少数ながらも「レバレッジ」が効いていたと見ることも出来る。みんなの党の持つ影響力は、あくまでも国民の高い支持率と人気を背景にしたものであることに注意が必要だ。

 教訓は、手近なところにある。参院選のしばらく前を想い出すと、鳩山由起夫首相が小沢一郎民主党幹事長を道連れに辞任し、菅直人氏にバトンタッチしたときに、菅内閣に支持が集まって、みんなの党の存在が霞みかけたあの時期を想い起こすべきだ。その後の菅首相の消費税を巡る発言の迷走といった「敵失」がなければ、みんなの党はもっと苦戦していただろう。それにしても、今後数年を考えると、民主党にとっては、菅代表の失敗の代償は大きかった。

 9月の民主党の代表選で、民主党の党首、即ち日本の首相が交代する可能性は小さくない。今のところ、菅首相の頼りは、頻繁な首相交代に呆れていて首相の交代自体に批判的な国民感情だけで、票読みの見通しは必ずしも明るいものではない。

 仮にフレッシュな首相が誕生したときに、みんなの党は相対的に埋没するのか、あるいは、新政権と有利な条件で連携するチャンスを持つのか、この違いは大きい。