開発型SPC(特別目的会社)はバランスシートを膨張させず、簿外で不動産開発を行うことができるスキームとして、長年不動産業界で多用されてきた。だが、早ければ2011年4月に予定される新会計ルールの適用で(既存分は12年4月から)これが意味をなさなくなる可能性が出てきた。

 建設重機が連日轟音を響かせる、大阪駅北口、梅田北ヤード再開発の工事現場。3000億円以上が投じられるこの関西最大の都市再開発プロジェクトの事業者には、「メックデベロップメント有限会社」「大阪駅北地区開発特定目的会社」など耳なれない会社が名を連ねるが、じつはこれらの会社は三菱地所、オリックスなどの事業者が出資する開発型SPC(特別目的会社)だ。

 梅田北ヤードだけではない。銀座東芝ビル、日本テレビゴルフガーデン、中野警察大学校跡地再開発──2006~07年に入札が行われた1件当たり1500億円以上の大規模開発プロジェクトに、開発型SPCはしばしば“常連”として登場している。

 そもそも開発型SPCとは、「企業の規模や体力がなくとも、大きな開発に絡める」(大手不動産会社幹部)“魔法の杖”であった。

 事業者は開発投資額の20~35%程度の投資資金(エクイティ)をSPCに供出。残りはSPCが取得する不動産を担保にした融資(ノンリコースローン)で調達する。現在の会計ルール上、事業者は開発型SPCを財務諸表に連結する義務はない。バランスシートをふくらませず、プロジェクトで上げた利益は配当利益として取り込めるため、資産効率もよい。

 さらに、新興企業にとっては「開発型SPCを使うことで自社の信用で融資を受けるよりも有利な条件で借りられることもあった」(業界関係者)。しかも、簿外で運用するためプロジェクトの収支も外からは見えない。

 ところが近々、魔法の杖は効力を失いそうだ。開発型SPCを連結対象に加えるという議論が進んでいるからだ。

 7月、上場企業の会計ルールを決める企業会計基準委員会は、「開発型SPCの連結化に向けて議論を継続する」との2回目の暫定合意に達した。現在、(1)新規のSPCは11年4月、既存のSPCは12年4月の2段階に分け連結対象とする、(2)すべてを12年4月から連結対象とする──という二つの案が出ている。年内をメドに改定の詳細について素案がまとまり、結論が出る見通しだ。