日本のインフラコストは高い。だから日本に工場を置くなど時代遅れ、海外に生産拠点をシフトすることが、当然の流れのように言われている。中国の人件費が上昇してくれば、次はベトナム、あるいは中国奥地、いやいやロシアだ、ブラジルだ、もっと安い国はどこだろうか……といった議論になるのは、マクロな経済動向を考えれば、的外れではないかもしれない。

 しかし、こうした議論を続けるだけで、果たして我々は元気になれるのだろうか? 日本において、まだできること、やるべきことがあるのではないだろうか? 今回は、日本の生産拠点が元気になるために、「ムダ」に着目する視点について、改めて考えてみたい。

最新鋭の工場にて
高度な自動化にも「ムダ」あり

 昨年末、ある製薬企業の新鋭工場を見学する機会に恵まれた。高度な自動化がセールスポイントになっている。

 原材料の一つは密封された容器で、6本ずつ段ボールに梱包されて納入されている。納入口のパレットに平置きされた段ボールは、巧みに動くロボットアームにつかまれて、高さ1メートル程のコンベア上に天地逆向きにして移される。段ボールはコンベア上を移動し、途中で上部に横から刃が当たり、底蓋がカットされる。

 そこへ別のロボットアームが伸びてきて、カットされた底蓋部分を押さえ、同時に両側面を吸引して見事に段ボールを上下180度回転させる。次に、そのロボットが底蓋以外の段ボール(側面と上面)を吸引して取り除くと、ようやく段ボールから資材の入った容器が顔を見せる。

 ここまでで多関節のロボットが2台使われている。さらに、資材の投入口は5メートル以上の高さにある。これまた別のロボットのアームが伸びてきて、容器2本を同時につかんで投入口へ持ち上げ、キャップを外して投入する。そのロボットは、戻るときは何も運ぶことなく、高さ1メートルのコンベアまで戻ってくる。1つのラインに3台の多関節ロボットが使われている。投入口が3ヵ所あるから、合計9台のロボットが動き回る先進的な資材投入工程である。