損失隠しで屋台骨が揺れた会社の立て直しを託されて丸4年。2012年に就任した笹宏行社長の下で策定された20年度までの中期経営計画が4月から走りだした。(「週刊ダイヤモンド」編集部 村井令二)

「信頼を回復しつつあり、経営再建にめどを付けた」。3月30日、都内のホテルで開かれた中期経営計画発表の席上でオリンパスの笹宏行社長はそう宣言し、「第2次笹路線」ともいえる経営方針を説明した。

 目を引くのは、主力の医療事業への一段の集中だ。2020年度の連結売上高目標1兆1000億円のうち、医療の売上比率は82%を占める。

 損失隠しで有罪判決が確定した菊川剛元会長兼社長は在任中、カメラ、医療の2事業に次ぐ柱の事業を打ち立てることを名目に新規事業への投資を続けたが、それが損失の隠れみのに利用された事実が発覚。笹社長は、そうした「負の遺産」を徹底してそぎ落とし、携帯電話販売事業のITXを売却するなど旧経営陣が手掛けた新規事業を相次ぎ処理。オリンパスの長年の課題とされた「第3の柱」の必要性を否定し、開き直るかのように、医療中心の事業構造を4年間で徹底してつくり上げた。

 ただ、過去4年間で誤算だったのはデジタルカメラ事業だ。スマートフォンに押されて想定以上にカメラ市場が縮小し、事業損失を止められなかった。15年度はリストラで6年ぶりに収支を均衡させるが、今後もさらに身を縮める計画で、20年度には連結売上高の5%程度にまで縮小する。「カメラ女子」文化の火付け役になった「PEN」、高級一眼で小型軽量化のニーズを取り込んだ「OMD」など商品面で存在感を放ちながらも、デジカメ事業の社内での位置付けは低下しそうだ。

 半面、中計では「医療で世界トップ」を目標に掲げ「医療のオリンパス」をより鮮明に打ち出している。世界シェア70%の消化器内視鏡に加え、外科、泌尿器科、婦人科、耳鼻咽喉科の各分野で内視鏡や治療器具のシェア拡大を狙い、症例ごとに多角化する計画だ。

強気の外科用市場に「巨人」

 特に重視するのが、ソニーと共同開発した「4K」内視鏡など外科分野。だが、外科用内視鏡の世界シェアは、米ストライカー、独カールストルツに次ぐ地位に甘んじる。また、外科用電気メスなど「エネルギーデバイス」の市場は、米メドトロニック、米ジョンソン・エンド・ジョンソンら「医療の巨人」が立ちはだかる。

 外科用内視鏡の市場成長は年2~4%、エネルギーデバイスは年3~5%にとどまるが、オリンパスはそれぞれ、年10%、年14%の成長を見込む。田口晶弘医療事業統括役員も「チャレンジングな目標」と認めるほどの強気の計画で、達成を疑問視する声が早くも上がっている。

 果たして「医療のオリンパス」に勝算はあるのか。次ページで笹社長に直接聞いた。