千葉県市川市、JR本八幡駅からタクシーに乗る。「河野製作所って分かりますか」と行き先を告げると、「ええ、分かります」と返事が返ってきた。車に乗ると道中、運転手さんがこう語り始めた。「この前(6月)、天皇陛下がお見えになったんですよ。それまで何を作っているか知らなかったんだけれども、すごい会社らしいね」。

直径0.03ミリ!世界最小の手術用針を開発<br />役員全員を退任させた<br />河野製作所・4代目河野淳一社長の情熱と革新(上)こうの じゅんいち/1963年4月千葉県市川市生れ。82年4月青山学院大学経営学部入学、85年4月~87年3 月米国ボストン留学、88年3月青山学院大学経営学部卒、同年4月年千代田火災海上保険入社、91年3月同社を退社、同年9月河野製作所入社、98年12月河野製作所・代表取締役就任、99年4月クラウンジュン・コウノ代表取締役就任、現在に至る

今日登場する河野製作所は、医療用器具の専門メーカー。世界最小・直径0.03ミリの手術用針を開発した。これによって、直径0.1ミリのごく細い血管の縫合も可能になった。同社はこうしたマイクロサージャリー(微小外科手術)用の糸つき縫合針で、国内6割のシェアを占めるトップ企業だ。2009年には経済産業省の「ものづくり日本大賞」も受賞した。

河野社長は4代目。オーナー家育ちのボンボンかと思いきや、実は経営改革に大ナタを振るった。その意味では、第2の創業者ともいえる。第1回目では、経営改革の狙いを、第2回目では製品開発への思いを中心に聞いた。まずは、河野製作所の特徴から、語ってもらおう。

河野社長:商品としては、少量多品種、高付加価値のものを製造しています。当社の特徴は、製造、販売、マーケティング、企画・設計開発、海外事業まで、全部自分たちでやっているということ。製造に関しては、もちろん一部、購入する機械もあるが、工具から設備まで、基本的にすべて自前で作っています。