日銀に追い打ちをかけた
米国財務省の為替報告書

円高を加速する米政府とヘッジファンドの「緊密な関係」為替市場では、ゴールデンウイーク中に円高・ドル安傾向が進展した

 4月28日の日銀の金融政策現状維持の決定を受けて、為替市場では、ゴールデンウイーク中に円高・ドル安傾向が進展した。日銀の決定に追い打ちをかけたのが、4月29日に米国財務省が発表した為替報告書だ。

 為替報告書の中で米国財務省は、わが国を通貨政策の「監視リスト」に載せ、為替介入を強く牽制する姿勢を示した。それをきっかけに、海外のヘッジファンドなどの投機筋が一斉に円買い・ドル売りを仕掛け、一時、1ドル=105円台にまで円高が進んだ。

 今回の為替市場の動きは、円高というよりもむしろドル安と見るべきだ。これまでのドル安の動きは、2011年11月から2015年の年央までのドル高トレンドの反動と見るとわかりやすい。

 2008年のリーマンショック以降、下落傾向が続いていたドルは、2009年の年央以降、米国経済の回復基調が鮮明化するにつれて、強含みトレンドへと反転した。そのトレンドは2015年の6月まで続いた。

 しかし、中国経済の減速などの要因で原油価格が下落し、シェール革命に沸いた米国企業の収益が悪化すると、ドル高の負担が米国企業の重くのしかかった。2015年7月以降には、米国主要企業の収益が前期対比でマイナスに落ち込んだ。

 ここへきて米国の政策当局としても、ドル高傾向の転換を模索せざるを得なくなった。それに加えて、米国FRBの金利引き上げ時期の後ずれの思惑が高まったこともドル下押しの材料になった。

 ヘッジファンドや為替ディーラーなどはそうした状況に敏感に反応し、取引の薄いゴールデンウイーク中にドル売り・円買いを仕掛けた。それが今回の円急騰を演出した。

 リーマンショックから立ち直った米国経済は、2009年6月以降、原油高やシェール革命を背景に力強く回復傾向を歩み始めた。それに伴い、量的緩和策を続けていたFRBは、徐々に金融政策の正常化に動きだした。

 米国金利が強含みの展開を示すに従い、為替市場ではドル買いが活発化し始めた。その結果、ドルは2011年11月以降上昇トレンド入りすることになる。