名古屋が風雲急を告げている。激しいバトルを繰り広げてきた河村たかし市長と市議会が最終局面を迎えた。市長側が議会解散の署名集めを8月27日からスタートさせる一方、議会側は市長への不信任案提出を検討。ダブル選挙の可能性も浮上してきた。行き着くところまで行った首長と議会の対立の根源を追った。

「われわれはこれまで我慢に我慢を重ねてきたが、(市長の)反党行為にプッツンと切れた」

 怒りの表情を見せるのは、民主党名古屋市議団の諸隈修身団長。昨年4月の市長選で河村たかし市長に出した党推薦の取り消しを8月9日、民主党本部に申し入れた。市議会解散請求(リコール)の署名集めを8月27日からスタートさせる河村市長との完全決別である。

 諸隈団長はさらに「これまでは不信任案を出す決定的な理由はなかったが……」と語り、9月議会での市長不信任案提出の可能性まで示唆した。

 民主党市議団を市長との全面対決に踏み切らせたのは、市長が結成した地域政党「減税日本」の動きであろう。自らの考えに近い議員を増やし、市民税減税と地域委員会復活の市長公約を実現させようと、次の市議選での多数の候補擁立を模索している。現職の議席を脅かす「反党行為」は、もはや許せないとなったのだ。

「(私の)どこが反党行為ですか? 民主党市議団こそ反党行為です」

 8月9日の定例記者会見で河村市長は、険しい表情でこう語った。そして、「私は党本部も認めた公約を実現するためにやっているのに、民主党市議団が自公と一緒になって反対していて、どうにもならんのでリコールをやるしかないとなった」と正当性を主張した。

 定数75の名古屋市議会で最大勢力は27議席を持つ民主党市議団。自民党市議団は23人で、公明党14人、日本共産党8人、それに一人会派が3人である。河村氏は自公の推薦候補を退けて当選したものの、2大公約への市議の姿勢は賛成1人に反対が74人。市民税減税は1年限り、地域委員会は八つのモデル地区限定と修正され、骨抜き状態となっている。

「僕はずっと協調を言ってきたが、もうそんな状況ではない。市長の手法は乱暴で、不安を感じる」