5月12日現在で49人が亡くなった熊本地震。震度7が2度繰り返されるという前代未聞の災害は、最新の耐震基準に基づく木造住宅さえも倒壊させた。「備えあれば憂いなし」とはいえない自然の脅威に、取るべき対策はあるか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

熊本地震で揺らいだ木造住宅の耐震基準2度の震度7の揺れで、最新の耐震基準を満たしているはずの住宅も被害を受けた Photo:JIJI

 震度7が2回、震度6強が2回、震度6弱が3回。4月14日から20日午前10時にかけて熊本県を中心に発生した一連の地震。震度7の揺れが繰り返し同じ地点で起きたのは、気象庁の観測史上初めてのことだ。

 それだけではない。これら短期間に繰り返された“想定外”の強い揺れは今、建物の耐震基準をも揺るがしている。

 そもそも耐震基準は、1981年の建築基準法の改正で、震度6強から7の揺れに見舞われても倒壊や崩壊を防げるだけの強度を求めてきた(新耐震)。だが、95年に起こった阪神淡路大震災では、新耐震の木造住宅でも被害が続出。そのため2000年には、木造住宅について柱と梁の接合金具や、壁の配置の仕様を明確にした(新・新耐震とも呼ばれる)。

 ところが、「倒壊して骨組みなどがむき出しになっていた建物のうち、私が見た中でも2軒の住宅は、新しく建てられたとみられるものだった」と、静岡県から建物の「応急危険度判定士」として熊本県益城町に派遣された、建築安全推進課の松下明生課長代理は振り返る。

 倒壊していた建物の大半は81年以前に建てられた旧耐震とみられる古い住宅だが、中には新耐震とみられる建物でも倒壊しているものがあったというのだ。

 また、福岡大学工学部の高山峯夫教授によると、日本建築学会九州支部による益城町での調査でも、2000年以降に建てられたとみられる新・新耐震の木造住宅でも、全壊しているものがあったという。

 すなわち、最新の耐震基準であっても、今回の熊本地震には対応できなかったケースがあるということになる。

 なぜか。松下課長代理は、応急危険度判定を行った地域の住民から「14日夜の1度目の震度7の地震では、新しい住宅には何の異変も見られなかったが、16日未明の2度目の震度7の地震で壊れてしまった」との話を聞いたという。

 これが、今回の熊本地震が浮き彫りにした問題だ。現行の耐震基準は、建物が繰り返し2回以上の震度6強から7の揺れに見舞われることを「想定していなかった」(国土交通省建築指導課)のだ。