日銀の追加緩和見送りについて
筆者は二つの見方を推測

日銀の「失業率の下限」に対する見方は正しいか日銀はこれ以上金融緩和しても無意味と判断したのか

 5月12日、日銀は4月27~28日に開いた金融政策決定会合の「主な意見」を公表した。多くの市場関係者は追加緩和を希望していたのに日銀は追加緩和を見送った会合なので、どのような意見が出ているのかは興味深い。

 追加緩和見送りについて、筆者は黒田総裁の属人的なことと、日銀のマクロ経済に対する見方の二つからであろうと思っている。

 黒田総裁は、(1)金融政策の理解しつつも、(2)元大蔵官僚の側面を持っているが、なにより(3)天邪鬼の性格である。今回は、あまりに市場の期待が出過ぎて、追加緩和の思惑が出過ぎたので、(3)天邪鬼の性格から、市場の思惑に乗りたくなかったのかしれない。

 それに加えて、政府は消費増税を止めて、財政出動するだろうから、金融緩和しなくてもいいという判断もあっただろう。これは、2014年10月の金融政策決定会合で金融緩和したこととまったく逆だ。

 というのは、2014年に黒田総裁は政府が消費増税を決めるのだから、それを援護するために金融緩和したという、(2)元大蔵官僚の側面の判断だった。今回は消費増税しないのだから、金融緩和が不要と考えたのかもしれない。これは(2)元大蔵官僚の側面が色濃く出ている。

 要するに、(2)元大蔵官僚の側面と(3)天邪鬼の性格という黒田総裁の属人的なものが出ている。

指標として重要なのは失業とGDP
株価や為替は二義的な意味しか持たない

 それに加えて、注目しておきたい点が(1)金融政策の理解である。これは日銀のマクロ経済に対する見方と密接に関係している。

 経済全体の指標としては、失業とGDPが重要だ。この意味で、株価や為替は二義的な意味しか持たない。GDPはやや足踏み、失業率は引き水準だが、下げ止まっている状態だ。一方、物価や賃金も伸び悩んでいる。

 こうした状況を日銀はどう判断しているのかが重要なポイントである。4月の金融政策決定会合時に公表された「経済・物価情勢の展望」の中に、気になる記述がある。わが国の潜在成長率について「0%台前半」としている点だ。