足元で約15年ぶりの円高が進み、わが国の経済にマイナスの影響が及ぶことは避けられない状況になっている。株式市場も年初来安値圏にあり、不安定な展開になっている。

 その背景には、世界経済の先行きに不透明感が出ていることがある。米国では景気減速感が鮮明化しており、欧州諸国にはソブリン・リスクの再燃が懸念される国もある。一方中国でも、今後経済成長のペースが落ちることが予想されている。

 国内消費の盛り上がりに期待を持てないわが国では、どうしても輸出に依存する割合が高い。ここへきての急速な円高は、輸出の拡大にブレーキをかけることになるだろう。

人件費、税金、円の“トリプル高”が到来!
まずは為替レートの安定が火急の課題

 もともとわが国では、相対的に人件費が高く、法人税の負担率も高い。それに円高が加わり、輸出中心の国内企業はまさに“三重苦”の状況に追い込まれている。

 ある大手企業の経営者の1人は、「これ以上国内にいては生き残れない」というほどの窮状に追い込まれているという。現在、わが国企業の優位性は低下しており、急速な円高はわが国の経済にとって命取りになりかねない重要なファクターなのである。

 こうしたわが国の窮状を救うのが、本来政治に求められる役割だろう。為替変動に関する明確な政策を提示することによって、ヘッジファンドなどの投機筋を震え上がらせ、為替レートの安定を図ることが必要だ。また、中長期的に企業を強くする政策を、着実に実行することが求められる。

 問題は、現在の民主党政権にそれを期待できるか否かだ。多くの人は、心配顔で首をかしげることだろう。私も同意見だ。