フェミニストの発言がかえって
AV女優の立場を追い詰める

川奈 やはり昔より健全になったと思います。実際、撮影の前には具体的な出演内容やNG事項などをAV女優本人と確認して出演の許諾をしてもらう制作会社も多いですし、万が一撮影でケガや病気を負ったときのため、会社で保険料を負担して出演者たちを保険に加入させているAVメーカーもあります。こうしたセーフティーネットを張ることは業界では当たり前になっているので、強制出演などの被害は今ではそうそう起こるものではありません。

中村 AV女優を「社会の犠牲者」としたい人権派にとっては、女優たちが自ら望んで出演する事実には納得できないでしょう。性を売り物にすること自体、職業として認めたくないのかもしれませんね。

川奈 そうですね。HRNの報告書には「AV出演は、職業安定法、労働者派遣法上の『有害業務』とされ、プロダクションが雇用する女優を勧誘することは職業安定法上の処罰対象」「AVへの出演は、職業安定法及び労働者派遣法上の『公衆道徳上有害な業務』に該当する」と記載されていて、AV女優の職業的権利どころか、AVに出演すること自体が違法であるかのような印象を与えています。

中村 違法と断定して職業そのものを全否定したら、元も子もないですね。現在のような不毛な対立を延々と続けるしかありません。

川奈 はい。実際、AV出演については職業安定法で「公衆道徳上、有害な業務」と定められているわけでもないし、民法のどこかでAVが名指しされているわけでもない。それなのに、AVに出演することそのものが有害な業務という認識が広がってしまうと、AV女優を貶めることにもなりますし、業界全体の萎縮にもつながります。

中村 HRNが、AV出演を「有害な業務」と判断する根拠はなんですか?

川奈 それは、AV女優を「個人事業主」ではなく「被雇用者」とみなしているからです。先ほどもお話したように、AV女優は個人で「外部委託」の形をとっていて、本来ならプロダクションや制作側とも対等な立場。ですが、HRNは両者との間に「指揮命令関係」があるとして、AV女優を実質的な「労働者」と位置づけています。AV女優を雇用主に従属させた上で性交をさせると管理売春になるし、職業安定法や労働者派遣法にも抵触してしまうため「有害な業務」と主張しているのです。

中村 テレビ出演する芸能人と同じで、制作側に指揮命令権はないですよね。デリヘルなどの合法風俗嬢の場合は、働く女性たちに社会保障などの権利を拡大するために店側と雇用関係を結ぶべきという意見もあるけど、AV女優だと事情が異なりますね。

川奈 AV女優の場合、「労働者」という立場にはまったくマッチしません。自分の映像が流通される以上、自らの意志で出演を決める必要がありますし、断る権利もあるのです。雇用主に従属し、自分で判断できないような環境でAVに出演するとなると、この仕事はものすごく屈辱的なものになりかねません。