女性タレントの乳がん闘病中のニュースを聞き、「他人事ではない」と感じた女性は多い。その乳がん治療も最新治療が次々と開発されることによって、徐々に光明が見えてきた。最近、筆者がかつて取材した鹿児島県の医療機関から、世界初となる「切らずに治す乳がん治療の実現」に大きな進展があったという朗報が届いたので、紹介してみたい。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

痛みもキズ痕も生じない
「命の洗濯」までできるがん治療!?

乳がんを切らずに治す「陽子線治療」に日本で大きな進展痛みも、キズ痕も生じない。その上、じっくりと「命の洗濯」までできてしまう乳がん治療が、もうじき実現するかもしれない

 痛みも、キズ痕も生じない。その上、じっくりと「命の洗濯」までできてしまう乳がん治療が、もうじき実現するかもしれない――先日、そんな朗報が、『メディポリス国際陽子線治療センター(鹿児島県)』から届いた。

 これがどのような意味を持つ事柄なのか、少し詳しく述べてみたい。

 6月11日、小林麻央さんが乳がんで闘病中であるというニュースを知った女性たちはみんな、「他人事ではない」と感じたのではないだろうか。かくいう私も6月中旬、自治体から絶妙のタイミングで届いた乳がん検診の無料クーポンを、これまでにないほどありがたく思った。

 近年、日本では乳がんと診断される人の数が増えており、一生のうち、女性の12人に1人がかかるとも言われている。一方で、治療法の進歩により、ステージI~II期では5年生存率90%以上、10年生存率もステージⅡであれば80%近くに達している。

 乳がんはもはや不治の病ではなく、年間9万人弱が罹患するものの7万5000人は生還し、化学療法や放射線治療を受けながら生きて抜いて行く時代になった。罹患経験者は「サバイバー」と呼ばれ、病と付き合いながらの人生を送ることから「手術を終えた後は、“糖尿病”や“高血圧”などと同じような“慢性疾患”だと思って」とアドバイスする医師もいるほどだ。

 こうした動向と並行して、治療法もかつての「生命さえ助かれば、それ以上は望まない」的なものから、身体への負担はより小さく(低侵襲)、術後のQOL(生活の質)はより高くを目指す方向に変化している。