世界柔道選手権東京大会が閉幕した。

 今大会は日本柔道界にとって大きな収穫があった。昨年のオランダ・ロッテルダム大会で日本勢は男女14階級で金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル3個。とくに男子は金がゼロ、銀と銅が1個ずつという散々の成績だった。「お家芸の危機」として騒がれ、ファンを心配させたものだ。しかし今大会は、金8個、銀4個、銅6個とメダルラッシュ。男子も3階級で金メダルを獲得した。

 この好成績の背景にはふたつの要素がある。ひとつはルール改正だ。柔道はもともと相手の柔道着の襟や袖などをつかみ組み合うところから始まる競技。ところが国際化とともに戦法が変質し、最近では組手など関係なく、タックルして倒すレスリングのような戦い方をする選手が多くなった。そこであがったのが「こんなのは柔道じゃない」という声だ。

 国際柔道連盟(IJF)を評価したいのは、この声に耳を傾け、ルール改正を行ったことである。新ルールでは、いきなり相手の脚を手で取って倒したら一発で反則負けになる。組み合わないで出す技、もろて刈り、朽ち木倒し、すくい投げ、肩車などは反則技となった(連続技や返し技としては認められる)。「組んで投げる」という柔道本来の形を取り戻すルール改正が行われたのだ。

 今大会でも相手有利の組手にさせない組み手争いが延々と続く試合が少なくなかったが、それでも不意に飛び込んで来ることはないという安心感が日本選手には有利に働いたのだろう。初日の100キロ超級で鈴木桂治が1回戦負けする波乱はあったものの、総じてどの選手も落ち着いて戦い、好成績を収めた。

 もうひとつは柔道が発祥した講道館のお膝元・東京で52年ぶりに行われる大会ということで、日本選手団にいつも以上に力が入っていたことがあげられる。東京開催のため審判が日本に甘めの判定をしたという外野の声もあったが、それよりも地元の大声援の後押しを受け、日本選手が奮闘したのだ。