まさかの「離脱派」勝利で世界に衝撃を与えたイギリスの国民投票。なにしろ、結果が明らかになった24日には、世界の株式市場から実に合計2兆1000億ドル(約215兆円)の金が消えたというから、それだけこのニュースの衝撃が凄まじかったわけだ。

英EU離脱、トランプ現象に見る「大きな物語」なき参院選のゆくえ日本でも同様の事象が起きようとしている

 正直に言って、僕もこの結果には驚いた。たしかに、事前の世論調査では「離脱派」有利と報じられていたが、調査結果と実際の行動は異なる場合も多いし、いくらなんでも本当に離脱派が勝つとは思わなかった。もっとも世界中の多くの人がそう感じていたからこそ、この投票結果が「衝撃的」だったわけなのだが、ともあれ今回の件でハッキリしたことがある。それは、「格差がますます拡大している世界のなかで、多くの人々が求めていることが何か?」ということだ。それは、単にお金(給料)でも、富の再配分でも、ましてや富裕層の没落でもないということだ。

イギリスで問われた「自国の主権」

 今回の投票を巡って、「残留派」が「離脱派」に対して主張してきたことは、「EUを脱退すれば、イギリス経済は大打撃を受ける」ということである。離脱派は「EUに加盟しているから欧州各地から移民が押し寄せてきて、雇用が奪われている」と言うが、「離脱すれば海外資本がイギリスから逃げ出し、EUとの貿易も減り、イギリス経済が低迷することで雇用はかえって減る」というのが残留派の主張である。これが日本のメディアが主に伝えてきたことだ。

 後者の主張は一見するとロジカルであり、合理的に見える(だから、世界の多くの知識人や経済専門家は、離脱はないと見ていた)。しかし、実体経済が得てして経済合理性と乖離するように、政治の世界や国民の感情は合理的でないことも多い。今回の国民投票に関して、イギリスのジャーナリストであるコリン・ジョイス氏は、ニューズウィーク誌でこのように述べている。

以下、「ニューズウィーク日本版」6月28日号より引用


僕が思うに、みんなが投票所で自分の胸に問いかけるのは「経済に悪影響があるか」ではない。最後に問うのは「自国の主権をカネのために売り飛ばしていいのか」だ。


 ここで言う「自国の主権」というのは、たとえば「EUに加盟していると、自国の法律もEUのルールに従わなければならない」ということだ。EUの肥大した官僚主義の弊害は、今回の国民投票関連のニュースでも繰り返し語られた。しかし、そのばかばかしい実態に関してはあまり伝えられていないと思う。この件については、ロンドン在住の情報通信コンサルタントの谷本真由美氏が、このように伝えている。

以下、「WirelessWire News」より引用


例えばタンポンの消費税を決める法律、掃除機の吸引力がすごすぎてはいけない、ゴム手袋は洗剤を扱えなければならない、スーパーで売られるキュウリとバナナは曲がっていてはいけない、ミネラルウオーターのボトルには「脱水症状を防ぎます」と書いてはならない等です。