前回は、フリーライダー問題を考えるうえで社員が認識しておくべき、「多様性社会」におけるコミュニケーション力の必要性を説明した。現在の職場では、自分にその気がなくても、コミュニケーション不足が原因で、周囲から「タダ乗り社員」と誤解されてしまうリスクが高まっていることを例に挙げた。

 日本はすでに、多様性社会に突入している。かつての単一性社会時代の意識のままで、コミュニケーションをとることはまずい。

 そのままでは、前述のような「フリーライダー問題」をはじめ、本人たちが意図しない問題が職場のコミュニティに発生するリスクが高まっていることを指摘した。

 そして、コミュニケーションに関する意識と質を変えなくてはいけないもう1つの背景として、「専門分化」というキーワードを採り上げて稿を終えた。今回は、前回に引き続き、フリーライダー問題に関わる「専門分化」という現象を詳しく説明しながら、職場におけるコミュニケーションの重要性をさらに深く考えてみよう。

顧客の要求ニーズの高まりなどで
急速に広がる仕事の「専門分化」

 「専門分化」とは、顧客の要求ニーズが高まったり、日進月歩に技術革命が起きたり、世の中が複雑化したりしてくると、1つ1つの仕事に専門性が強く求められるようになってくることだ。

 イメージ化のために、まず、顧客の要求ニーズが高まるとどうなるかということから考えてみよう。

 そこでは、以前は営業マンが1人で全部やっていたようなことを分解して、それぞれの専門部署を設置し、専門的に対応する人を置くようになる。

 たとえば、顧客からのクレーム対応。クレームは「次の商品開発・サービス開発のタネ。その中にこそ要求ニーズが隠されている」と捉えられるようになってくると、企業のクレームに対する扱いは変わってくる。将来価値につながる「宝」なのだから、その情報は慎重かつ大切に扱わなくてはならなくなる。

 また、クレームが会社の「ブランド・信用」に根本的に関わる時代になった。その一方、手の込んだ悪質クレーマーも増えてきた。