私立中受験は家族みんなで乗り越える最初の試練と言われる。塾に通って勉強している子どもだけでなく、送り迎えや塾の課題を家で面倒を見る母親、休みの日に塾や模試の送り迎えに協力する父親、家で勉強している時には静かにして邪魔にならないようにする兄弟、姉妹など、家族みんなの協力あってこそだからだ。

 中学受験に適性のない子は、おそらくいない。目標に向かって努力することの大切さは、誰にとっても変わらないからだ。

 しかし、当の本人にやる気がない場合がある。中学受験そのものを望んでいないこともある。そんな場合は中学受験の意味を子どもとじっくり話し合う必要がある。勉強するのが嫌いだから、友達と遊べないというだけの理由では、将来、「自分のためにならない」ことを理解させなければいけない。ここで注意したいのは勉強嫌いにさせないことだ。学校を卒業して社会に出ても“学ぶ”ということは必要なのだから、最初の段階で勉強嫌いにしてしまったのでは、その後、やる気にさせるのにかなり時間がかかってしまうことになる。

 やる気が見えないときには、時には塾をやめさせて、別の塾に通わせることも必要だろう。本人の気持ちを優先することはもちろんだが、将来のことを考えてあげることは親の務めであり、大切なのはそのバランスだ。

 私立中に入学しながら、公立中に転校してしまう子どもがいる。なかには校風になじめない場合もあるが、たいていは、成績不振でついていけないケースだ。合格したら「勉強しないでいい」「入試が終わったら好きなことをしていいから」など、受験勉強の厳しさを乗り越えさせるための甘い言葉を真に受けたがために、勉強しなくなる。志望校に合格するのが目的になってしまうと、こういう不幸が起きる。親としても中学入学はゴールではなくスタートだということを、しっかりわきまえておくことが必要だ。

 もっとも注意して見極めるべきは、入学する学校への適性だ。偏差値が子どもの実力相応だから適した学校とは限らない。こんな例がある。成績優秀な子が東大に50人も合格する男子校に合格した。しかし、進学したのはもっと入りやすく、東大合格者は10人にも満たない学校だった。その子は中学に入ったらラグビーをやりたいため、強豪校として知られる私立中に進学したのだ。彼はいまでも成績トップでラグビーを続けている。偏差値偏重では適性は見抜けない。