新興国で成功した「逆ジレットモデル」であるが、先進国でも上手くいくのかを、エプソンでは2013年頃から検討し始めた。

 まずは2ヵ国を選んで、タンク型のテストマーケティングを行った。調査のポイントは、(1)タンク型のコンセプトが受け入れられるか、(2)従来機と比べて価格が2~3倍になる本体が売れるか、(3)タンク型により他社製からのスイッチがあるか、の3点にあった。

 テストはおおむね成功し、2014年から欧州、2015年からオーストラリア、アメリカ、カナダでタンク型プリンタの発売を開始した。そうしているうちに、その情報を知った日本人から「日本ではいつ出すのか?」という問い合わせも来るようになった。

カニバリゼーションは恐れない
従来型と同じ事業部で開発

 日本は新興国と比べて、圧倒的に純正のインクカートリッジが採用されており、ジレットモデルが成り立っている国である。そこに本体を高くする「逆ジレットモデル」を発売すれば、当然カニバリゼーション(事業の共食い)が懸念される。

 そこで日本でもユーザー調査を行った結果、レーザープリンタから乗り換える人や、他社製品から乗り換える人も相当数いると推定された。社内では、従来型プリンタとタンク型プリンタは同じ事業部で扱っていたことから、「どちらでも売れればOK」「お金の入り方が違うだけ」「タンク型を望む人がいれば、トータルの売上は増えるはず」「ユーザーに選択肢を提供しよう」という声が強かった。それを受けて、2016年2月に日本でタンク型プリンタが発売された。本体は6万円弱と従来機の3倍近くするが、インク代は従来機の10分の1程度ですむ。

 なお国内では、外付けタンク対策という打ち出し方ではなく、インクカートリッジ交換に関わるメンテナンスの手間の軽減、印刷コストの削減が、ユーザーへの訴求点になった。