9月15日、日本当局は6年半ぶりに為替市場へ介入した。米国で景気不透明感、量的金融緩和観測が強まり、ドルは広範な通貨に対して下落しつつあった。82円台まで下落したところで、日本当局がドル買いに出動し、85円台後半へと押し返した(右のグラフ参照)。この介入は戦術的に良好な成果を上げた一方、円高抑止効果は一時的なものにとどまる可能性が高い。

 米国金利(あるいは日米金利差)とドル/円相場の高い連動性を示す下のグラフは、介入のこの両面を理解する助けとなる。歴史的に米金利とドル/円の密接な相関は、米国で景気回復が進んで最初に利上げが行われる直前まで続く傾向がある。ところが9月に入って、米金利がいったん上昇したにもかかわらず、逆にドル安・円高が進んだ。米国情勢の先行き不安、9月半期決算に向けた日本勢のドル売りニーズが重くのしかかっていることがうかがわれた。

 為替介入の成果として期待されるのは、こうした相場需給の一時的偏りを補正することだ。報道によると9月15日の介入額は過去最大に近い2兆円規模。輸出入企業や投資家のドル売りを吸収しながら、ドル安・円高への揺り戻しを許さず(上のグラフ参照)、投機的な円買い・ドル売りポジションを一部巻き戻しに追い込んだと見られる。こうして市場の介入警戒感を強めるとともに、金利水準とバランスの取れた為替相場の秩序を確保し、円高動意をいったん抑えることに成功した。