僕も渋谷センター街あたりでモンスターをゲットするときは、通行人の邪魔にならないように道の端やビルの陰などに移動してやっていたが、それでも人の流れを邪魔している感は否めない。なんとなく罪悪感があるので落ち着いてゲームができないのだ。「人混みのなかでポケモンGOをやるのはやはり迷惑だ」ということで、すぐにやめてしまった。渋谷や銀座に来ている人たちにも、そのような感覚があったのではないだろうか。

 しかし一方で、ポケモンGOがさまざまな社会問題を引き起こしていることは、ニュースでも報道されている。すでに日本でも、接触事故やトラブルが全国で相次いでいる。プレイしながらの自転車運転で人にぶつかってケガをさせたり、バイクや自動車のながら運転で警察に検挙されたりしている。なかには、プレイに夢中になっていた女子大生が原付バイクの男にカバンをひったくられるという事件まで起きている。しかしプレイヤーの全体数を考えれば、これらのトラブルはごく一部のことであり、ほとんどの人は他人に迷惑にならないようにポケモンGOを楽しんでいる。日本人はやはり公共心が高いのだと思う。

期待される「健康増進」と
「地方活性化」への効果は?

 このように日本でも社会現象となったポケモンGOには、社会的な活用に期待する人も多い。「ポケモンGOは日本を救う、世界を救う!」とまで主張する人も少なくない。こうした人たちの主張の基本は、「健康増進」と「地方活性化」だ。しかし、ハッキリ言って僕は懐疑的だ。

 たしかに、ポケモンGOをやっているとたくさん歩く。この週末、僕も土曜日には8キロ、日曜日には5キロ歩いた。僕の生活スタイルからすれば、かなり歩いている。ニュース報道などをみると、1日10キロ歩く若者も珍しくないようだ。このペースで日常的に歩くことができれば、たしかに健康にはいい。ただし、このペースで続けられれば、の話である。人間の生理というものは、基本的に「便利なもの(楽なもの)」と「気持ちのいいもの(楽しいもの)」を求めるようにできている。この生理に反するものは、基本的には売れない。まれに売れる場合もあるが、長くは続かない。

 人間は、運動することが好きな人と、そうでない人に分かれる。運動が好きな人はポケモンGOがなくても、週末毎に10キロ20キロと走ったり、サーフィンに行ったり、社会人になっても野球やサッカーの試合をやっていたりする。こうした人たちは体を動かすことが好きなので、10年でも20年でもスポーツを続ける。つまり、健康に問題を抱えている人が少ない。

 むしろ問題となるのは、体を動かすことへの価値観が低い人たちだ。僕もそんな一人で、運動は苦手ではないが、スポーツをやっている時間があれば、仕事に関する本を読んだり、新しいプロジェクトの企画書を書いたりしていたい。なので、健康のために運動しなければと思っていても、どうしても優先順位が低くなってしまう。さらには、そもそも運動が苦手、あるいは嫌いで、自宅で漫画を読んだりゲームをしたりしているほうがいい、という人も数多い。

 健康増進という視点で言えば、課題は(僕を含む)こうした運動不足の人たちをどうやって運動させるかだが、たしかにポケモンGOは一時的には効果はある。しかし5年先、10年先もポケモンを捕まえるために、5キロ10キロと歩き続けているかというと、はなはだ疑問である。僕がこの週末に何キロも歩き回ったのもマーケティング屋としての関心があってのことで、つまり、仕事という自分の最も高い価値観を満たすために歩き回っただけであって、ポケモンGO現象がある程度把握できれば、もうそのようなインセンティブは働かない。つまり、ポケモンGOが健康増進に役立つことはあるだろうが、その効果は極めて限定的だと思う。