孫子のロジカルシンキングはあらゆる分野に使える

「孫子」の有名な言葉に「彼を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」とあります。孫子はこのとき、「敵」という言葉を使わず「彼」としています。この「彼」には「敵」以外の環境すべてが含まれるとする研究者もいるので、ビジネスでいえば、ライバル会社だけでなく、政府の方針転換や市場の変化、消費者動向といったことを調べなさいという教えととらえることもできます。

 さらに、「彼」よりも、「己」を知ることのほうがはるかに難しいのではないでしょうか。自分が本当にやりたいことは何なのか、これを知らずにビジネスは始まらないと思うのです。多くの人は自分のことなのに、自分よりも外に答えを求めようとします。私は年に数回、静かな場所で自分に聞く時間を作っています。

 このように「孫子」のスキルはいくらでも現代に応用できるのです。兵法とは「戦いのノウハウ」ですが、基本的には理詰めであり、ロジカルシンキングです。ですから、時代を超えて、あらゆる分野に使えるスキルなのです。勉強にも、人間関係にも、家族内の交渉事にも十分対応できます。

参考文献/『最高の戦略教科書 孫子』守屋淳著(日本経済新聞出版社)