英国の産業構造を知らずにEU離脱問題は語れない

 イギリスのEU離脱問題を評価するには、イギリス経済についての正しい理解が必要だ。イギリスの経済構造は、日本のそれとは大きく違う。しかし、そのことが、日本では必ずしもよく知られていない。日本と同じような産業構造の国であると考えると、EU離脱問題を正しく理解することができない。

停滞しているイギリスの製造業
伸びているのは高度サービス業

図表1に見るように、イギリスにおいて、製造業は停滞している。伸びているのはサービス産業だ。

 就業者数で見ると、2015年9月において、総就業者数3374.4万人のうち、製造業は264.8万人であって、7.8%にすぎない(Summary of labour market statisticsによる)。

 これに対して、金融・保険業は114.8万人であり、3.4%を占める。不動産52.4万人を加えれば、5.0%になる。

 また、専門的・科学技術的活動というカテゴリーの就業者が291.1万人いるのが注目される。ウエイトは8.6%であり、製造業のそれを超える。しかも、年率4.5%ときわめて高い伸びを示している。

 つまり、イギリスの場合、経済を支え、成長をけん引しているのは、製造業ではなく、高度サービス業なのである。

◆図表1:イギリスの産業別の実質GDP

英国の産業構造を知らずにEU離脱問題は語れない(注)2008年第1四半期=100
(資料)Office for National Statistics

 この点では、アメリカと似ている。そして、日本やヨーロッパ大陸諸国とはかなり状況が異なる。ドイツ、フランス、イタリアなどの大陸諸国では、製造業の比率はまだ高い。

 日本は大陸諸国と似た構造だ。就業構造を見ると、製造業は16.1%と、イギリスに比べてかなり高い(労働力調査のデータによる)。その半面で、金融保険業は2.5%にすぎない。学術研究、専門・技術サービス業の比率は、3.4%であり、製造業の5分の1程度だ。

 多くの人は、イギリスが日本と同じように製造業の比率が高い国だと考えがちである。しかし、実際にはかなり異質の産業構造を持っていることに注意が必要だ。