今春以降、コメ相場が再び下げ足を強めている。2007年の「JA全農ショック」以来の暴落だ。総選挙をにらみ、いずれ農林族議員が零細農家救済のための“バラマキ”に動くのは必至である。しかし、もはや臭いものにふたをするだけでは、なんの解決にもならない。コメ暴落の深層を追った。

 「コメの過剰在庫を抱え込んだ大手卸から、特売企画のオファーが殺到している。夏商戦では安売りの目玉になりそうだ」

 大手スーパー幹部は手ぐすね引いて待っている。

 昨秋からじりじりと下降を続けていたコメ相場は、6月に入ってさらに悲惨な状況に陥っている。

 コメ相場の代表銘柄である2008年産の新潟コシヒカリを例にとれば、ついに一等米60キログラムで1万5000円(外税・玄米、以下同)の値が付いた。2万2900円の高値を付けた昨年5月から1年強で30%以上の暴落である。

 新潟コシヒカリだけではない。たとえば、関東コシヒカリはすでに1万3000円台に突入。千葉コシヒカリなど、産地によっては1万3000円割れ目前の銘柄すらある。

 「先月に田植えを終えたばかりなのになあ。今年の新米価格はまた大暴落だ」

 東北地方の零細農家は下げ止まる兆しのないコメ相場に表情を曇らせる。

 直近までの政府米価格(政府備蓄米の放出価格)は1万3000円前後。政府米は07年産の古いコメである。それと、08年産の価格がほぼ変わらないというのだから、いかにも異常な安値だ。農家が懸念するように、今年の新米価格も08年産に引きずられて下落する公算は大きい。

高騰から再暴落へ

遅々として進まない農業政策の方針転換

 今回のコメ暴落の伏線は、2年前の「JA全農ショック」にある。07年7月、全国農業協同組合連合会(全農)は新米集荷の支払い方式を全国一律で「内金+追加払い」と決定し、各都道府県の主力銘柄60キログラム当たりの内金を7000円とした。

 全農は農家から約3000円の運送・販売手数料を取っていたから、コメが1万円以上で売れなければ7000円の内金だけで追加払いは差し引きゼロになる。新潟コシヒカリの場合、前年までは1万3000円が農家に前払いされていたから、実質的には大幅値下げということだ。

 農林水産省は02年には「米政策改革大綱」を取りまとめ、コメの生産・流通を市場原理に委ねる政策大転換を打ち出していた。全農の支払い方式変更は、市場支配力と政治力でコメの高値安定を図ってきた価格操作の放棄を意味している。