2016年度第1四半期が増収増益となり、中期の利益目標達成の1年前倒しが見えてきたNTTドコモ。さらなる成長に向けた次の一手について吉澤和弘社長に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 北濱信哉)

ドコモ新社長、非通信サービスの成長に自信<br />よしざわ・かずひろ/1955年生まれ。群馬県出身。79年岩手大学工学部卒業、同年日本電信電話公社(現日本電信電話〈NTT〉)入社。黎明期から携帯電話事業に携わり、事業の発展に貢献。12年常務執行役員、14年代表取締役副社長を経て、16年6月より現職。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

──昨年12月の総務省「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」による取りまとめでどんな影響が出ていますか。

 販売方法の見直しによって、携帯電話番号ポータビリティ(MNP)の動きが落ち着いた実感はあります。以前は販売奨励金が高くなり過ぎていて、キャリア間の乗り換えであれば実質0円で端末を購入することができた。しかしタスクフォースやガイドラインが出たことにより、そうした行き過ぎた顧客獲得の動きは沈静化しました。MNPが全体として非活性化してきているように思います。

 こうした背景からも今後、契約者数が急激に伸びるということは考えにくい。ですからNTTドコモとしては新たな契約者の獲得よりも、1人当たりの平均売上高(ARPU、アープ)をいかに上げていくかに注力します。具体的に注目しているものとしてはタブレットの2台目需要があります。

 電子書籍や動画配信サービスの普及により、タブレットの大きな画面でコンテンツを楽しみたいというニーズが高まっています。携帯電話やスマートフォンに加えタブレットを利用してもらうことで、1人当たりの契約回線の数を増やしていく。また充実したサービスを提供することによって、通信量の増加によるアップセル(より高いグレードの商品・サービスを販売すること)も見込めます。こうした形でアープを増加させていきたいと考えています。

──就任会見で掲げた「回線契約ビジネスから会員制ビジネスへの転換」とは。

 ドコモは音声通話やデータ通信以外にもさまざまなサービスを提供しています。しかしこれまではその管理を電話番号の契約で行っていたので、ドコモの契約から離れてしまうとそうしたサービスが利用できなくなっていました。

 携帯電話はドコモを使っていなくても、ドコモの提供するサービスを使いたいという人は大勢いる。回線契約はあくまでサービスの一つにすぎません。そこでサービスを提供していくベースとして、「dアカウント」の仕組みを整えています。ドコモの契約者でなくても無料で使える共通IDによってさまざまなサービスの加入や利用ができるようにしています。

 すでに複数のMVNO(仮想移動体通信事業者)には「dマーケット」のサービスも提供している。こうした取り組みによって、彼らとも協調関係を築いていけるのではないかと考えています。